和食STYLE

食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第5回

近江商人の息遣いを感じるお菓子の国。たねやの大胆作戦。

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%91

今日お話しするのは、一番大きな湖「琵琶湖」が美しい、滋賀県。
実は、僕自身「日本で行ったことがない県」の上位ランクでもあるのですが(笑)、少し縁があり、最近行き始めております。

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%92

先日ちょうど彦根市を訪れたところ、彦根城はライトアップされ、NHK大河ドラマ「真田丸」の視聴率が好調、地元の武将でもある「石田三成」の展示が行われておりました。石田三成のお城は、彦根城近くの「佐和山(さわやま)城」。すでにお城は跡形もなく、その一部が彦根城に移築されたと聞きましたが、彦根市は城下町として風情よく、街並みもコントロールされ、非常に心地よい町でした。
そんな彦根市から車で30分。今回の目的は、近江八幡にある、「ラ・コリーナ近江八幡」です。ここは、和・洋菓子を展開している「たねや」さんの新たな拠点です。
http://taneya.jp/la_collina/

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%93

この施設は、「周囲の水郷や緑を活かした美しい原風景の中での、人と自然がふれあう空間づくり。和・洋菓子を総合した店舗および飲食施設や各専門ショップ、農園、本社施設、従業員対象の保育施設などを設けるたねやグループの新たな拠点(以上たねやホームページより)」と位置づけられ、今年の7月に本社社屋も完成し、さらに計画が進められています。

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%94

一つ一つのディテールが考えられ、この近江八幡に足を運ぶ人たちを魅了しています。建築は、日本の建築史家で、東大名誉教授でもある藤森照信氏。彼の起こした図面やスケッチを見る機会がありましたが、人の身長や作業で考えられる高さや導線設計がきちんと見ることができ、単に「デザイン先行」ではなく、一方で、周囲環境に馴染ませた結果がこの風景なんだと感じることができました。

地方の魅力を掘り下げた時に、そこで生まれるもの、存在するものをどうやって輝かせるかがポイントになります。もちろん建築やデザインも、おおきに目立たせることができる「サイン(=記号)」でありますし、生産者や事業者が行う活動をさらに活性化させる力を持っております。

一方で、デザインに頼りすぎ、商品力が行き届いていないものもありますし、その逆、商品力は抜群だけれども、どうもデザイン含めてイマイチというものも散見されます。

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%95%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%96

そんな中、たねやさんの「ラ・コリーナ近江八幡」での取り組みは、こうした目を見張るデザインもさることながら、自社商品である「お菓子」に対して、「楽しさ」「喜び」「甘さ」「雰囲気」を崩さずに、お客様に十分、空間を含めた体験価値を提供しているところです。そこにはウンチクもあるわけでもなく、「お客様への接し方」を細かくデザインにも反映され、表現されていることに感動しました。よく見ると、いろんな方がサポートしています。
http://taneya.jp/la_collina/about.html

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%97

また、「たねや」さんは、和菓子だけではなく、「クラブ・ハリエ」というバームクーヘンが主な洋菓子も展開、爆発的な売り上げを誇っておりますが、もちろんここまで来ることに苦労も絶えなかったと聞いております。並大抵なものではなく、亜流やパクリができるような代物ではないことは確かですが、一つ真似ができるとすれば「お菓子を楽しみにしているお客様のイメージを損なわないこと」かもしれません。

%e5%86%99%e7%9c%9f%ef%bc%98

昔、商店街にあった、作り手が見えるお菓子屋さん。お客さんの声がはっきり聞こえる店づくり。そんな当たり前の風景を、デザインとともに昇華し、そこに真摯に取り組み、働いている人たちの環境とお客様の接点を近づけたことが、たねやの次の世代に送るメッセージなのかもしれません。オフィスも見させていただきましたが、東京のクリエイティブオフィスとなんら遜色のない空間づくりと働き方にもこちらも感動しました。大きな作り庭と、奥の小さな隙間のようなドアが、会社の入り口です(笑)

「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」。

まさに近江商人の心得どおりの、たねやさんの経営戦略を垣間見た滋賀でした。

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp