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NIPPONの「和食遺産」を巡る旅 郷土料理編 愛媛の「松山鮓」

松山鮓
しまなみ海道や道後温泉など観光名所が豊富な柑橘王国愛媛県。
東予~南予まで地域性豊かな郷土料理があります。

前田ゆかさん、早春の瀬戸内で伊予の祝い寿司を習う

今月から、全国各地に伝わる行事食や郷土料理を発見する旅がスタートします。第1回目の旅人は前田ゆかさん。愛媛県のおもてなし料理「松山鮓」のレシピを教わりました。
さらに南予地方の宇和島に伝わる「鯛めし」や「ふくめん」など、地域色あふれる郷土料理にも出合いました。

瀬戸の小魚の旨みを効かせた甘めの酢飯と贅沢な具材でもてなく祝い酢

古くから、松山では祝い事やお客様をもてなすときに、松山鮓(別名もぶり鮓)を作る習慣がありました。“もぶる”は、混ぜるという意味の方言で、松山出身の正岡子規も故郷の味としてこの鮓をこよなく愛し、多くの句の中で「松山鮓」について詠んでいます。
夏目漱石が初めて松山を訪れ、子規の家に立ち寄ったときに、松山鮓でもてなしたというエピソードも有名で、そのときの様子が高浜虚子によって書き残されています。
瀬戸の魚介類をたっぷり飾るもぶり鮓は、「なんぞ事」(何か特別なこと)があったときになくてはならないご馳走だったのです。
見た目はいわゆるちらし寿司ですが、いちばんの特徴は「にごり酢」と呼ばれる合わせ酢を使った甘めの酢飯にあります。
トラハゼやエソなど、小魚の焼き身をほぐしてすし酢の中に加え、煮立たせるのがポイント。小魚の出汁が加味され、すし酢の旨みが深まります。時代の流れとともに家庭で作られることも少なくなった松山鮓ですが、大切な食文化を継承する取り組みが行われ、地元の寿司店などでも提供されるようになり、今では松山を代表する郷土料理として観光客にも注目される名物になっています。

正岡子規や夏目漱石が大好物のお袋の味「もぶり鮓」

句碑
松山鮓を故郷の味として愛した正岡子規。夏目漱石の来訪時に松山鮓でもてなした様子を詠んだとされる句碑が松山市の水産市場正門に建てられています。

松山鮓

  • もぶる(混ぜる)具材酢飯のなかに混ぜ合わせる具は、味付けして刻んだ椎茸、人参、ゴボウなど。穴子の端なども刻んで加えます。
  • トッピング上に盛り付ける具材は、錦糸玉子、焼き穴子、大エビ、しめ鯖、タコ、味付けした椎茸、キヌサヤなどが定番。ほかにも鯛のづけを入れたり、春はタケノコやフキ、木の芽、秋は栗を入れる場合も。

特徴はにごり酢にあり!

  • にごり酢①にごり酢の材料は、素焼きにしたトラハゼやエソなど白身の小魚、米酢、砂糖、塩。
  • にごり酢②焼いたトラハゼの身を手でほぐし、骨が口に当たらなくなるまでさらに包丁で細かく刻む。
  • にごり酢③米酢、砂糖、塩を合わせて加熱し、沸騰する前に刻んだトラハゼの身を加えてひと煮立ちさせる。
  • にごり酢④トラハゼの旨みが加わった「にごり酢」が完成。瀬戸の小魚を使った甘めの合わせ酢が味の決め手。
松山鮓はホゴ汁
松山鮓はホゴ汁と一緒にいただきます!季節に応じた瀬戸内の魚介類を彩りよく盛り付けた華やかな松山鮓は、祝い事やおもてなしに欠かせないおふくろの味。
ホゴ(かさご)を丸ごと使った汁と一緒に食すのが一般的。

マエユカさん、松山鮓作りに挑戦

地域の催しや観光イベントなどで松山鮓を作って、郷土の味の伝承に力を注いでいる三津浜婦人会の方々に、前田ゆかさんが作り方を習いました。

前田昔からお祝いの席に食べられていたお寿司だと聞きましたが……

――祝い事やお祭りのときには皆で集まって協力しながら作るんです。
それを近所におすそ分けしたり……。

前田一度にたくさん作るから、具材の下ごしらえも大変ですね。

――手分けしながら「私のところではこうしていた」と話しながら作るのがまた楽しいんですよ。

前田それぞれの家庭の味が受け継がれているから温かみがあるんですね。
しっかりレシピを教わって、私も子供たちと一緒に作ってみようと思います。

材料(約15人分)

  • 8合
  • 人参3本
  • ゴボウ3本
  • 干し椎茸60g
  • トウロク(インゲン)・
    キヌサヤ 合わせて1パック
  • タコ500g
  • 大エビ200g
  • 穴子5本
  • しめ鯖2.5パック
  • 10個
  • 砂糖適宜
  • みりん適宜
  • 醤油適宜
  • 適宜
  • ※合わせ酢(にごり酢)
    米酢300cc
  • 砂糖220g
  • 大さじ11/2
  • トラハゼ8尾

材料(約15人分)※合わせ酢(にごり酢

  • トラハゼ(白身の小魚、チリメン、アナゴの骨などで代用可) を素焼きし、細かく身をほぐし、包丁でよくたたく。
  • 酢、砂糖、塩を合わせ火にかけ、沸騰する前にトラハゼの身を入れ、ひと煮たちさせる。
  • 米を少し硬めに炊く
  • 椎茸は水で戻し、砂糖1:みりん1:醤油1で味付けして刻む
    (上盛り用は大きめに刻む)
  • 人参は細切り、ゴボウはささがきにして椎茸の戻し汁、砂糖1:みりん1:醤油1で味付けする。トウロクは塩で湯がき斜め細切りに。キヌサヤは塩で湯がいておく。
  • タコは塩で湯がいて薄切りに、エビは塩で湯がいて皮を剥く。穴子はつけ焼きにしてひと口大に切る。酢しめ鯖は食べやすい大きさに切っておく。
  • 卵は薄く焼き、錦糸卵を作る。
  • 炊きあがった米をすし桶に移して合わせ酢をまわしかけ、米を切るように混ぜながら団扇で煽いで冷ます。
  • 味付けして刻んだ椎茸、人参、ゴボウをすし飯に混ぜ込む。
  • 上に錦糸卵をちらし、魚介類や椎茸、トウロク、キヌサヤをバランスよく盛り付ける。
すし丸

松山鮓や愛媛の代表的な郷土料理が味わえる日本料理店

瀬戸内海の新鮮な魚介を使ったお寿司や魚料理、県内各地の郷土料理が楽しめる創業65年の老舗。酢締めした鯛、タコや穴子、ヨリエビなどが美しく盛り込まれた松山鮓(1,050円)は人気の一品で、鯛のアラを炙って出汁を取り、甘めの合わせ酢を効かせた上品な味わいが特徴。ほかにも、鯛そうめんや宝楽焼、鯛飯など、愛媛の伝統料理を堪能できます。

ph19
松山市二番町2-3-2
☎089-941-0447
11:00~14:00、16:30~22:00(L.O.)
土・日・祝は11:00~22:00(L.O.)無休

松山鮓

レイヤードトップス¥26,000パンツ¥17,000
(ともにキャラ・オ・クルス)

松山鮓

すし飯の中に味付けして刻んだ具材を混ぜ込んだらその上に錦糸卵を一面にちらして、最後に魚介や椎茸、キヌサヤなどをバランスよくトッピングします。

  • すし酢の中に焼いた魚を入れるなんてびっくり
  • わぁ~きれい!こんなに上手にできました~。

炊きたてのごはんに合わせ酢を回しかけたら素早く団扇で煽ぎます。
生魚を盛るのでごはんを冷ましてからトッピングを。

南予地方・宇和島は地魚を使った珍しい郷土料理の宝庫です

東予、中予、南予と、地域ごとに異なる食文化が定着している愛媛県。南予に位置する宇和島は、伊達家の藩政が9代続いた城下町で、江戸時代まで日振島を中心に、伊予水軍が活躍した地としても知られています。
船上で酒盛りした後に、鯛の刺身をごはんにのせて食べたのが始まりとされる「宇和島鯛めし」など独自の風土から生まれた料理が受け継がれています。真珠や魚の養殖、みかん栽培も盛んで、ご当地グルメでも注目されています。

  • 福めん福めん板コンニャクを細く切って甘辛く炒った上に、瀬戸の小魚エソの紅白そぼろ、みかんの皮、青ネギを放射状に盛り付けたお祝い料理。食べる前に全体をよく混ぜていただきます。お酒のつまみにも。¥510
  • 宇和島鯛めし宇和島鯛めし生卵を溶いただし汁の中に、鯛の刺身と海藻やシソの葉などを入れて軽く混ぜ、温かいごはんの上に適量ずつかけていただく。炊き込みではなく、生の鯛を使うのが宇和島流。¥1,710
  • 太刀魚巻太刀魚巻美味しさに定評のある瀬戸内海の1本釣り太刀魚。三枚に下ろして竹串に巻きつけ、甘辛いタレをつけて照り焼きにする南予名物で、老舗の魚屋が昭和62年に考案した比較的新しい郷土料理。¥610
かどや駅前本店

名物の「宇和島鯛めし」をはじめ
地魚を使った多彩な郷土料理が揃う

「宇和島鯛めし」や「福めん」、「太刀魚巻」など南予の郷土食が楽しめる店。宇和海で獲れた新鮮な魚を使った料理を中心に、50種類もの豊富なメニューが揃います。「さつま」、「宇和島じゃこ天」、「フカの湯ざらし」など、代表的な郷土の味覚を少しずついろいろ楽しめるセットもおすすめ。

宇和島市錦町8-1
☎0895-22-1543
11:00~14:30、17:00~21:00 休み 木曜昼

瀬戸内

シャツ¥25,000肩にかけたニット¥24,000パンツ¥23,000バッグ¥27,000(すべてキャラ・オ・クルス)靴(私物)

撮影/谷口 京 モデル/前田ゆか スタイリスト/鈴木仁美 ヘア・メーク/高梨 舞 取材・構成/秋山美英

STORY 2015年4月号より