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光文社厳選!和食情報ナビ

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ぬる燗、熱燗、とびきり燗、「燗」の意外な味わいを探りながら酔い進む……

前川泰之のSAKEを巡る冒険

新連載2回目の今回は、ブームにのる日本酒の最新事情を探りに、俳優の前川泰之が有名酒販店へ。前回の日本酒フェアに引き続き、エンドレスな美酒銘酒のテイスティングに、またしても足元が揺らぎっぱなしのナビゲーター。30年以上にわたり日本酒業界をけん引してきた長谷川浩一社長の巧みなリードで、日本酒熱に拍車が掛かる!

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日本酒のポテンシャルを最大限引き出す燗酒とは

白状します。昨晩も日本酒を飲みました。
今日は迎え酒です、ハイ……。今回のテーマは「燗酒(※1)」。最近はお燗番(※2)がいる酒場が人気らしい。「燗酒」というとガード下や屋台でオジさんが飲むものと思っていたけれど、そんなイメージを払拭してくれたのが、代々木八幡の『Sakeria酒坊主』だ。

こちらの店では、日本酒のタイプや料理に合わせてベストな温度の燗酒を楽しませてくれる。日本酒には甘み、辛味、酸味、苦味、渋味といった味の要素があり、温度が上がるにつれてそれぞれの味わいが際立ち、あるいは落ち着いたりするそうだ。ひと口に燗酒といっても飲用温度によって「人肌燗」「ぬる燗」「上燗」「熱燗」「とびきり燗」、店によっては「あっちっち燗」なんてあるから面白いよね。

早速試飲タイム! まずは「日置桜 鍛造きもと強力」。常温では香りに甘みを感じたけれど、渋味もあってにごり酒らしからぬドライな味わいだ。次に60℃の燗酒で飲んでみた。ク~旨い。甘みが広がるけれど、酸にキレがあって味が締まる。食欲が増す感じ。次は、生酒(※3)「酔右衛門」。常温よりも、ぬる燗の方が奥行きが出て飲みやすくなった。今度は熱燗で試すと口当たりがトロリとして今までにない香りが立ってきた。「これ同じ酒?」と聞き返すほど違いがある。お燗マジック、恐るべし……。

ヴィンテージ違いの燗酒にもトライした。「悦 凱陣 讃州山田錦17BY」はまだ若さが残っていて、味わいも柔らかだ。程よい温かさが染みるわ。凹んでいる時にこの酒を飲んだら、泣いちゃうね。対照的に「悦 凱陣 讃州山田錦24BY」は熟成タイプ。お燗にすると味にパンチが出て、厚みが増す。料理は「サンマのテリーヌ」。脂がのっているから、温かい燗酒の方がしっくりくるね。

さらに「豚バラのコンフィ」には「白影泉 純米」。70℃だから「あっちっち燗」? 酸味も程よく、甘さが引き締まってシャープな印象だ。豚バラの油っぽさを洗い流してくれる最強のマッチング。旨すぎる。熱々の料理に温かい酒なんて、ワインじゃ到底考えられないし、日本酒ならではの魅力だね〜。

燗酒そのものも美味しかったけれど、何より料理との相性が抜群だ。それはそうだよね。日本酒は米が原料。温めればごはんみたいに旨味を感じるし、料理が引き立つのも当然。それにザ・和食だけでなくスパイスの効いたエスニックな料理にもぴったりくるのが嬉しいよね。
「アルコールは体温に近い温度で吸収されるので、燗酒の方が体にスムーズに吸収されるし、酒が抜けるのも早いですよ」と、前田さん。しかも燗酒にハマった人は冷酒に戻れないらしい。 ってことは、俺も? とうとうこっちの世界にきちゃったよ。

Sakeria酒坊主(代々木八幡)

1.左から「白影泉 純米」、「梅津 生酛」、「悦 凱陣 讃州山田錦17BY」、「悦 凱陣 讃州山田錦24BY」、「日置桜 鍛造きもと強力」。こちらの店で扱う日本酒は基本的にどれも燗酒に向いている。2.Tシャツに坊主がトレードマークの店主・前田 朋さん。吉祥寺の銘酒亭『にほん酒や』を経て、昨年9月にオープン。3.サンマのテリーヌ¥1,500。アンチョビとケッパー、九条ネギと実山椒など多彩なソースを添えて。4.豚バラのコンフィ¥1,350。スパイシーなソースによりさっぱりと味わえる。5.酒かん計を使い丁寧にお燗を付ける前田さん。温度の微妙な差異が味の違いに。6.酒器も魅力のひとつ。お好みの盃が選べるのも楽しい。注しつ注されつのやりとりも日本酒独特の文化。

燗酒加熱して温めた日本酒のこと。「燗酒」または「お燗」ともいう。ひと口に燗酒といっても温度帯によって呼び方はさま ざま。盃に注いだ時の温度で、35~40℃が「人肌燗」。40~45℃が「ぬる燗」。45~50℃が「上燗」。50~55℃が「熱燗」。55℃~「とびきり燗」と呼び名が変わる。酒のタイプによっても適正温度は異なるが、季節や料理、気分に合わせて楽しむのが正解。
お燗番料亭や居酒屋、酒亭にいる「お燗のプロ」。単に酒の温度を調整するだけでなく、料理に合わせた日本酒と温度、飲み頃をサーブするタイミングなどを考慮する、酒場のコーディネーター的存在。最近はお燗番のいる店も増えつつあり、日本酒の魅力を広げている。
生酒酒を造る工程で「火入れ」(加熱処理)をまったくしない酒のこと。通常は搾ったあとに火入れをして貯蔵。さらにもう一度火入れをして製品にする。繊細かつフレッシュな味わいが特徴の生酒は非常にデリケートなため、一般的には冷やで飲むのに適していると言われている。
Sakeria酒坊主(代々木八幡)

撮影/寿 友紀 ヘア・メーク/川島享子(FACTORY1994)スタイリング/中西ナオ 取材・文/粂 真美子