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第二回 おつきあい×和食文化 [後編] 大人の割烹を楽しむためのお作法

割烹は目の前で料理をつくってくれるライブな食空間。おまかせコースを楽しむのもいいいれど、和食にちょっと慣れたら、アラカルトで旬の味を楽しむことにも挑戦してみてはいかが?大人の愉しみを、西麻布の京風割烹「信乃(しの)」の女将、しのぶさんと宮澤義政料理長が教えてくれます。

[前編]では、会席料理の流れに添って、お作法のポイントをご紹介しましたが、[後編]ではちょっと上級な、カップルが割烹でアラカルトを楽しむためのポイントをご紹介します。割烹の中にはおまかせコースのほかにアラカルトメニューを揃えている店、アラカルト中心の店もあります。

もちろん、好きな物を好きなように注文すればいいのですが、こうした店では一品ずつ、客の食べ方やお酒の進み具合などを見ながら料理を出してくれるので、居酒屋のように好きなものを手当たり次第に頼むと、味わいの濃淡が楽しめなかったり、旬の食材を十分に味わえないかもしれません。

アラカルトとはいえ、割烹ですから旬の美味を流れよく楽しめるような、頼み方のコツがあります。また、大人の空間ならではのお作法を知っておくと、より楽しめるようになるはずです。 (今回ご紹介する料理は9月のもの。時季やその日の仕入れによって料理の内容は異なります)。

お店に入るときのポイント

POINT

[靴を脱いで上がる場合のマナー]

「信乃」のように、靴を脱いで座敷に上がるような店もあります。こうした場合、どのようにすればいいのでしょうか?

基本的には普通に靴を脱いで上がればいいのですが、ちょっとしたマナーをしのぶさんが教えてくれました。
「普通に脱いで頂ければ結構です。靴を片付けるのは店の者の仕事ですから。靴を脱いでからご自分で直す方も多いのですが、そこまでしなくてもいいと思いますよ。ただ、店の者が直しやすいように、さりげなく靴を横に揃えていただいたりするお客様は格好ええなぁ、と思います。一番スマートなのは、玄関の脇に横向きで立って靴を脱ぐ方法ですね。これなら、店の者にお尻を向けることもなく、靴は横向きになりますから、直しやすいですね」

料理の流れとお作法のポイント

「信乃」は先付けとお造りがお決まりで、その後の料理をお品書きから選ぶスタイル。お品書きには「万願寺とじゃこ」「はもと松茸の卵とじ」「とうもろこし天ぷら」など旬の料理から「ぽてとさらだ」「ハムかつ」など酒のつまみ的なメニューまで、魅力的な料理が並んでいます。

モデルのお二人は「早く出てきそうなものは…」「旬のものも食べたいし…」と悩みます。そこで宮澤料理長がアドバイス。
「アラカルトであっても、基本的には会席料理などのコースの流れに添って頼まれると、旬の味がひと通り味わえると思います。基本的な流れさえわかっていれば、おまかせコースとは違って、お好みで品数を調節できますし、ひとつの料理をお二人でシェアすることもできます」

しのぶさんも「普通は店の者がその日のお薦めや組み立てについてご相談にのりますので、わからなければ聞いていただけばいいですよ」とのこと。
アドバイスにしたがって、煮物、焼き物、メインと以下のような組み立てにしました。

POINT

[飲み物]

割烹では最初に「お飲物は?」と聞かれることが多いのですが、何を頼めばいいのでしょうか?

「ビールでも日本酒でもお好きなものを飲んでいいですし、お酒が飲めない方はお茶やお水でも。和食には日本酒が合うと思いますが、無理をしないでお好きなお酒をマイペースで飲むのがスマートですね」(しのぶさん)

一、先付け「いちぢくの胡麻クリームがけ」 先付には季節の食材を使った、優しい味わいの料理が出ます。

いよいよ一品目。乾杯と共にいただくはじめのお料理です。

POINT

[食べるスピード]

出された料理はすぐに食べてしまった方がいいのでしょうか? それともゆっくり酒と味わった方がいいのでしょうか?

「お好きなように食べればいいのです。食べるのが早いお客様でしたら料理を早めのテンポでお出ししますし、それは店が気を使えばいいことです。でも、たとえばカップルで女性がゆっくり食べる方なら、男性も女性のペースに合わせるなどの気遣いがあると女性はうれしいですよね」(しのぶさん)

二、お造り「カサゴ、ミル貝、サンマ」 季節の魚介の盛り合わせです。

ネタも白身や赤身や貝類、薬味も季節の風味を意識した盛り合わせが出てくる二品目です。

POINT

[醤油の使い分け]

お造りの魚介によっては、醤油とポン酢など複数の小皿が出て来たり、醤油の入った小皿が二つ出てくることがあります。
「お料理をお出しするときに説明しますしお好みですが、基本的には白身などがポン酢、赤身などが醤油で食べていただくといいですね。また、醤油皿が二つある場合は、片方がワサビ、片方が生姜など、薬味によって使い分けていただくと香りや味わいが混ざらずにすみます」(宮澤料理長)

POINT

[食べ方]

[前編]でも紹介したように食べる順番は味の繊細なものから濃いものへ。この場合は、カサゴ、ミル貝、サンマの順で食べると美味しくいただけます。ワサビや生姜などは醤油に溶かずに刺身の上にのせて食べると香りが引き立ちます。穂紫蘇がついていたら、お造りの上や醤油に散らしていただきます。

POINT

[おしぼりで汚れを拭くのはNG]

醤油をこぼしたときなど、ついおしぼりで拭いてしまいますが、「おしぼりは手を拭いていただくものです。汚れたら言っていただければ拭きますので、おしぼりでは拭かない方がいいですね」(しのぶさん)

三、煮物「冬瓜と蟹のあんかけ」(男性) 「賀茂茄子の湯葉あん」(女性) 季節の食材の炊き合わせです。

「どうせなら、違うものを食べてみよう」ということで、煮物は男性と女性、異なるものをお願いしました。

POINT

[料理の取り替え]

カップルで違う料理を頼んだ場合には、途中で取り替えっこしたくなりますよね。こんな場合はどうすればいいのでしょうか?

「器ごと取り替えてもいいのですが、できれば取り皿をお願いしてそこに分け合うのがスマートですね。さらに、食べかけのものを取り分けるのもお行儀が悪い感じなので、口をつける前にとりわけた方がいいですね」(しのぶさん)

POINT

[器の褒め方]

多彩な器も和食の楽しみのひとつ。料理を頂いている際に、「この器、素敵ですね!」と褒めるのはいいのですが、その際に器を持ち上げるのはNG。
「万一、滑って落としてしまったりすると、お客様が楽しめなくなってしまいますよね。器を愛でるときは折敷などに置いたままにした方がいいですね」(しのぶさん)

四、焼き物「鰻の白焼き」(男性) 「はもフライ」(女性) 旬の魚介類を、焼きものか揚げものにして出します。

男性は「鰻の白焼き」、女性は焼き物代わりの揚げ物「はもフライ」を選びました。

POINT

[アラカルト割烹は自由]

最初に、アラカルトであっても会席料理の流れに即して頼むといい、と説明しましたが、せっかくのアラカルトですので、すべて懐石料理と同じようにしなくても構いません。二人で焼き物を頼んでもいいのですが、このカップルのように焼き物と揚げ物を頼んで取り分ければ、懐石料理より量を少なく、バリエーションを広く楽しむことができます。

五、メイン「牛肉と松茸」 牛肉など、ボリュームのあるメインの食材に、旬の食材を組み合わせたメインのお料理です。

メインにふさわしい牛肉と走りの松茸の組み合わせを選択しました。これは、量的なことを考え、ひとつ頼んで二人で取り分けることに…。

POINT

[料理の取り分け方]

「大きな器に入った料理を取り皿に分けるには、大きな器の盛り付けと同じ盛り付けにするように取ると美しく見えますよ」(しのぶさん)

六、酒肴「だし巻き玉子」「ピリ辛こんにゃく」 一般的な和食のおかずも、「信乃」では酒の肴として出しています。

メインを控えめにしたため、そしてまだ酒が残っていることもあり、二人は「締めのご飯の前に、何かもう少しつまみたい気分」という。そんなときのために、お品書きには気の利いた肴が揃っています。二人はこの二品を頼みました。

POINT

[酒肴について]

「ウチのような割烹では、ちょっとした肴を用意しています。お二人のようにもう少しつまみたい方のためです。日本料理をよくお食べになる常連さんは、コースのような料理はお食べにならず、こうした肴をあれこれつまんでお酒をお飲みになる方もいます」(しのぶさん)
割烹に通い慣れた上級者ならではの楽しみもあるようです。

POINT

[取り分け]

「こうした肴についても、ひとつの皿で出た料理は取り皿をいただき、取り分けるのがスマートです。料理は女性が取り分けることが多いのですが、こうしたお酒の肴は男性が取り分けると女性はうれしいものですよ」(しのぶさん)

POINT

[ご飯のタイミング]

割烹では締めにご飯を用意することころが多いのですが、アラカルトでお願いする場合、そのタイミングも考えた方がよさそうです。
「ご飯は土鍋で炊くので30分以上かかります。アラカルトであれこれお食べになっていて、急に『ご飯をくれ』と言われても間に合いません。また、炊いてからあまり時間が経ってしまってもいけません。早めにご飯を食べたい方、あるいはゆるゆるとお酒を飲みたい方は、早めに言って頂けると丁度いいタイミングでご飯を炊き上げることができます」(宮澤料理長)

七、ご飯「天然茸の土鍋ごはん」 季節の食材を生かした土鍋ご飯も和食の楽しみのひとつです。この日は天然の茸がたっぷり入ったご飯でした。

土鍋で炊きあがりの状態から、食べたい分だけよそってもらいました。

八、デザート「レモンのシャーベット、サイダーのゼリー」 和食のデザートは水菓子(果物)が多かったのですが、最近ではこうした手間を加えたスイーツを提供する店が増えています。

お口直しとしてもさっぱりとしてとてもおいしい「信乃」のデザート。これで充実した食事もしめくくりとなりました。

POINT

[お会計]

最後のお支払いもスマートに行いたいですね。通常は男性が払うケースが多いですが、できれば女性がお手洗いに立った間に支払いを済ませておきたいものです。女性も男性が格好よくお支払いできるように、デザートを食べ終えたらさりげなくお手洗いに行く「気配り」も必要でしょう。

取材協力

しのぶさん(左) 宮澤(みやざわ)料理長(右)

店舗情報

信乃(しの)

(非公開)

松田龍太郎

おつきあい×和食文化[後編] 監修

監修者編集後記

和食屋は、料理人も食べる側も適度な緊張感があります。その適度な緊張感は、大人の魅力を高める秘訣です。
特に大切な人と和食を食べる機会が生まれるとしたら、それは、あなたにとって魅力アップのシグナル。そして少しでも知っていれば、フォローもできる。ぜひおもてなしのイロハ、チェックしてみてください。

松田 龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身 慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。
その後、2007年企画・プロデュ−ス業に転身。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。