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第一回おつきあい×和食文化[前編]初めての日本料理を楽しむためのお作法

お椀のフタはどこに置く?ご飯のお代わりの仕方は?……謎と悩みが多くて、なんとなく敷居が高い和食。でも大丈夫。気軽に楽しく味わうためのコツを「銀座 とよだ」の岡本圭一料理長が、会席料理の流れに沿って教えてくれます。

日本料理には「会席料理」や「懐石料理」などがあります。会席料理は、かつて武士などが客をもてなした「本膳料理」が基本となっており、お酒を飲みながら頂く料理。懐石料理はお茶席の料理(茶懐石料理)のことです。

会席料理は、一汁三菜(いちじゅうさんさい。お椀、刺身、焼き物、煮物)が基本です。具体的な順番としては、先付(さきづけ。前菜)、お椀、向付(むこうづけ。刺身など)、焼き物、煮物(炊き合わせなど)、ご飯・止め椀(味噌汁)、甘味(果物などのデザート)が基本。ここにお凌ぎ(おしのぎ。寿司など)や揚げ物などが加わることもあります。

一方、懐石料理は折敷膳(向付、ご飯、味噌汁)、煮物、焼き物、強肴(しいざかな。進肴(すすめざかな)などとも言う。炊き合わせなど)、吸い物(箸休めなどとも言う)、八寸(海山の幸の盛り合わせ)、湯桶(お湯とおこげなど)、香の物、菓子、抹茶と言う流れです。
現在、料亭や割烹などで出される料理は会席料理が多いのですが、店によって順番や内容が異なったり、懐石料理をベースにした料理を提供するところ、あるいは会席料理に懐石の要素を加えたコースにしているところもあります。

ここでは、「銀座 とよだ」の会席料理を例に、料理長の岡本圭一さんに料理の流れとお作法を教えていただきます(料理の順番や内容、作法などは店や流派などによって異なることもあります)。

料理の流れとお作法のポイント

料理が出てくる直前に折敷に置かれた布ナプキンを取り、
膝元にかけます。

料理の流れとお作法のポイント料理の流れとお作法のポイント
一、先付け「スッポンの煮凝りと冬瓜、松茸」先付けは最初に出てくる料理で、本料理の前に出てくる前菜、酒の肴としての役割があります。

POINT

[箸留めの取り方]

料理が出て来たらお箸を取りますが、両端が細くなっている「利休箸」の場合、真ん中に巻き紙の「箸留め」がついています。これを取るのですが、破って取るのはNG。片方の箸を引くことで簡単に取れます。

[箸留めの取り方][箸留めの取り方]

POINT

[器と箸の持ち方]

和食は器を持って頂くのが基本です。ただし、お箸を持ちながら両手で器を持つのはNG。まず両手で器を持ち、左手で器を持ったまま右手で箸を取り、左手の小指で支え、右手で箸を持ち替えて頂くのがお作法の基本です(「お椀」のところで詳しく紹介します)。

[器と箸の持ち方][器と箸の持ち方]

POINT

[器に残ったものの食べ方]

写真の煮凝りのように最後に器に残った分が箸では食べにくい場合があります。このような場合は無理に箸だけで食べようとせず、小さじを頂いて救って食べても構いません(こうした料理の場合は小さじが添えられることが多い)

[器に残ったものの食べ方]

POINT

[箸の置き方]

食べている途中は箸置き(「箸枕」とも言う)に置きますが、箸置きがない場合は、折敷の縁にかけておきます。

[箸の置き方]
二、お凌ぎ「穴子寿司」お凌ぎは空腹をしのぐための小さなご飯物です。

POINT

[大きな料理の食べ方]

一口サイズで出てくるものはそのまま食べればいいのですが、大きめのものが出て来た場合は、箸で小さくして頂きます。箸を横にして切るようにしてもいいですし、箸で挟むように割り切っても構いません。

大きな料理の食べ方
三、お椀「萩しんじょう」(萩の花に見立てたしんじょう)お椀は日本料理の華。出汁の取り方、季節の食材の取り入れ方など、日本料理の粋が凝縮されています。

POINT

[霧を吹く意味]

お椀が出されたとき、蓋が少し濡れていることがあります。これは拭き忘れた訳ではなく、器の中身にはきちんと料理が入っています、確認しております、という印なのです。封書を出すときに封をしてから〆と書くのと同じことで、霧が振ってあるのは中身が確かな証拠です(茶懐石では茶筅で霧を振ります)。

[霧を吹く意味]

POINT

[お椀の蓋の置き方]

お椀の蓋を開けたら、蓋の内側を上にして置きます。蓋の内側には季節感のある蒔絵などが描かれていることが多いので、それを鑑賞してから頂くようにします。蓋の外側を上にして置いたり、お椀に立てかけたりするのはNGです。

[お椀の蓋の置き方]

[お椀の蓋の置き方][お椀の蓋の置き方]

POINT

[器の持ち方]

先付で説明したように、和食は器を手で持って頂くのが基本です。

①まずは両手でお椀を持ち、出汁を味わいます。お箸を持ったまま器を持つのはNGです。

②中の具を食べる際には、両手でお椀を持ち、左手でお椀を持ったまま右手で箸を持ち上げて左手の小指に挟みます。

③右手を持ち替えて箸を下から持つようにし、左手でお椀を持ちながら中の具を頂きます。

④箸を置くときには逆に、左手の小指に箸を挟み、右手を持ち替えて上から箸を持つようにし、箸置きに置きます。

[器の持ち方][器の持ち方]

[器の持ち方][器の持ち方]

[器の持ち方]

POINT

[食べ終えたら]

お椀を食べ終えたら、元通りに蓋をします。内側を上にして置くのはNGです。通常は、蓋をすれば食べ終えたことはわかりますが、蓋をして少しずらしておくとよりわかりやすいでしょう。

[食べ終えたら][食べ終えたら]

[食べ終えたら]
四、向付「鯛、烏賊(イカ)のお造り」向付は懐石料理でご飯と汁の向こう側に置かれるお造りなどのことで、会席料理では、割烹の会席料理などでは単独で出されることが多くなっています。

POINT

[食べる順番]

お造りでは複数の魚が盛り込まれることが多いのですが、食べる順番としては味の薄いものから濃いものへ、が基本です。たとえば平目(ひらめ)と鮪(まぐろ)が盛り込まれていたらまず平目(ひらめ)から頂きます。烏賊(いか)と鯛(たい)であれば、まず烏賊(いか)からです。

POINT

[山葵(わさび)やつまの食べ方]

お造りに添えられた山葵は醤油に溶いてもいいのですが、できれば、鮮烈な香りを楽しむために魚の上に山葵をのせて醤油を少し浸けて食べるとより美味しく味わえます。大根のつまなどはそのまま食べてもいいですし、魚で巻いて食べるとさっぱりした味わいが楽しめます。また、穂紫蘇(ほじそ)が添えられている場合は、左手で茎を持ち、箸で挟んでつぼみを落とし、それを魚にのせて食べるのがお作法です。

[山葵(わさび)やつまの食べ方][山葵(わさび)やつまの食べ方]

POINT

[醤油皿は持ってもいい]

和食は器を手で持って頂くのが基本。醤油皿も手に持って構いません。その方が食べやすく、醤油を垂らして服を汚す心配もありません。

五、焼き物「カマスの柚庵(ゆうあん)焼き」焼き物は季節の魚を用いたものが出ます。塩焼きや柚庵焼きなど様々な種類がありますが、お椀同様、料理人の技術が現れる花形料理です。

POINT

[食べ方]

これも食べやすい大きさに箸で切って(割って)頂きます。会席料理などでは、骨や頭が付いた魚は出てきませんので、箸を使って簡単に全て食べられるはずです。

POINT

[酢橘(すだち)の絞り方]

酢橘などが添えられていることがあります。これは魚に酸味や香りを加えた方が美味しく食べられるためで、そのために塩が若干強めになっている場合もあります。とはいえ、最初から酢橘を全体に絞ってしまうと、魚の風味が失われてしまいます。まずは酢橘を絞らずに一口食べて頂き、魚の味や塩気に合わせて酢橘を少し垂らして頂くのがいいかと思います。また、酢橘を絞る際には、隣の方に飛ばないように手を添えるのがマナーです。

[酢橘(すだち)の絞り方]
六、煮物「季節の野菜と飛竜頭(ひろうす)の炊き合わせ」煮物は旬の食材と出汁(だし)を合わせる和食の基本料理。なかでも炊き合わせは、それぞれの素材を別々に炊いて組み合わせる手間と技が必要な一品です。

POINT

[椀物の蓋の使い方]

煮物なども蓋付きの器で出てくることがあります。お椀と同様の作法で食べればいいのですが、煮物などの場合、器から直接だと食べにくい場合、あるいは器が持ちにくい場合があります。その場合は、蓋を取り皿代わりにして食べた方が食べやすく、美しく見えます。また、茶碗蒸しなど器が熱い場合には、蓋の内側を上にし、その上に器を置いても結構です。

[椀物の蓋の使い方]

POINT

[渡し箸]

料理がこの辺りまで進むと、お酒も進み、ついお作法が崩れてしまいがち。特によくあるのが、「渡し箸」です。器の上に箸を置くことで、これはNGです。箸置きにきちんと置きましょう。

[渡し箸]
七、ご飯「筋子(すじこ)ごはん」、止め椀(味噌汁)、香の物(漬け物)締めのご飯も懐石料理の重要な要素です。白飯と香の物程度で締める場合もありますが、土鍋の炊き込みご飯などが多くなっています。

POINT

[お代わりのサイン]

ご飯は好きなだけ召し上がって頂けばいいですし、お代わりが欲しければ「お代わりを下さい」と言って頂いて結構です。ちなみに、茶懐石流のお作法としては、茶碗に一口だけご飯を残しておくのがお代わりのサインということになっています。

[お代わりのサイン]
八、甘味「嶺岡豆腐」(みねおかどうふ)最後のデザートは水菓子・水物(果物)や甘味・菓子などになります。料理は終えたので折敷は外します。
以上が、料理の流れと基本的なお作法ですが、和食は好きなように楽しんで頂くのが一番です。ただ、自分流に食べてしまうと、料理の美味しさが十分に味わえなかったり、見た目に美しくないこともありますので、できれば基本的なことは覚えておいた方がいいと思います。料理の大まかな流れ、そして「器を持って頂く」「箸は箸置きに置く」といった最低限のルール、割烹の場合は「皿の上にあるものはすべて食べられる」ということくらい覚えておけば大丈夫です。最大のお作法は「わからなければ聞く」ですから。
用語解説
割烹と料亭
「割烹」の「割」は庖丁で切ること、「烹」は煮炊きをすることで、料理人が客の目の前で料理をつくって提供する料理店のこと。「料亭」は、個室で料理を食べつつ芸妓などによる歌や踊りなどを楽しむ料理店のこと。
折敷(おしき)
元来は「折って敷く」という意味で縁のある食盆のこと。懐石料理ではここにご飯、お椀、向付を乗せる。現在では、縁のない盆も「折敷」と呼ぶようになっている。
しんじょう
「糝薯」「真蒸」「真丈」「真薯」(しんじょ)など。白身魚や海老、蟹などのすり身をまとめ、蒸したり揚げたり茹でたりしたもの。お椀やおでんの具などに用いられる。
柚庵焼き(ゆうあんやき)
醤油、味醂、酒、柑橘などを用いてつくる柚庵地に着けた魚を焼いた料理。
飛竜頭(ひろうす)
ひりゅうず、ひりょうずなどとも呼ばれる。豆腐をすりつぶして野菜を加え、油で揚げたもの。がんもどきのこと。
嶺岡豆腐(みねおかどうふ)
牛乳に葛などを加えて固めたもので、甘味以外に料理にも用いられる。名前は日本の酪農の発祥地である千葉・嶺岡牧場に由来する。

プロフィール

岡本圭一(おかもと・けいいち)さん

京都や大阪で修業した後、六本木「山の井」料理長を経て2002年~「銀座 とよだ」料理長。茶懐石をベースとした端正な料理、かつ野菜を取り入れた軽やかな味わいに定評がある。

店舗情報

銀座 とよだ

東京都中央区銀座7-5-4 ラヴィアーレ銀座ビル 2階

TEL 03-5568-5822

営業時間 / 11:30~13:30入店(月曜、土曜は12:00~15:00)

17:30~20:30入店

定休日 / 日曜、祝日

松田龍太郎

おつきあい×和食文化[前編] 監修

監修者編集後記

一つ一つの所作に、和食文化ならではの「作法」があります。それを知ることでより和食屋に行きやすくなり、会話や雰囲気を楽しむことができます。ぜひ皆さんも試してみてください。

松田 龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身 慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。
その後、2007年企画・プロデュ−ス業に転身。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。