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光文社厳選!和食情報ナビ

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NIPPONの「和食遺産」を巡る旅 京都の「賀茂なす」

京都の上賀茂地域などで古くから作られてきた正円形の大型のなすで、京の伝統野菜に指定されている。
直径10~12㎝、重さ400~500gほどあり、大きなものは1kgにも及ぶ。濃い紫色で、果肉が緻密でしっかりしている。

前田ゆかさん、古都の伝統野菜「なすの女王」を満喫

独特な形や味わいの伝統野菜が数多く受け継がれている京都。
今回は京野菜の代表「賀茂なす」の産地洛北、上賀茂へ出かけました。

上賀茂特産の伝統野菜継承に取り組む生産者を訪ねました

上賀茂で代々野菜作りを営む大野容且さんの賀茂なす畑を見せていただきました。ソフトボールのように丸くてずっしり重く、ゆかさんもびっくり。(左)大きさを測る輪にのせて、直径10.5㎝以上になったら収穫します。ロゴ入りスウェット¥13,000スカート¥12,000(ともにアン レクレ)
賀茂なす

品種改良をしていないナスにはトゲがあるので要注意。賀茂なすはガクが三角形になっているのが特徴。

果物のように瑞々しくギュッと締まった実が特徴

海から遠く離れ、新鮮な海産物が手に入りにくかった土地柄、京都では古くから野菜の栽培が盛んで風土に根ざした良質な京野菜が作られてきました。
さらに、寺社を中心に精進料理や茶道の懐石料理が発達してきた中で、京料理の主要な食材として多彩な品種が生み出されてきたことから、京都でしか味わえない個性的な野菜がたくさん継承されています。現在、京都府により「京の伝統野菜」と認定されているのは41品目。その代表格で、「ブランド京野菜」にも認定されている“賀茂なす”を味わいに、前田ゆかさんが京都に向かいました。
最初に訪ねたのは、賀茂川の上流、上賀茂地域で賀茂なす栽培を伝承している若手生産者・大野容且さんのハウス。背丈よりも高く茂った畑は、すでに収穫の最盛期を終えたところでしたが、その日の朝に採れたばかりの艶々と黒光りする賀茂なすをさっそく見せていただきました。

前田わぁー、立派!
ずいぶん大きいですね。これでサイズはどのくらいありますか?

――上賀茂では直径10・5㎝以上、重さは430~440gにならないと収穫しないので、
大体直径12cm、500g程度が主流です。

前田そのつどサイズを測ってから収穫するのですか?

――その大きさの輪っかがあるので、それを実に当ててサイズを確認してから収穫しています。

前田賀茂という名前が付いているのは、昔からこの上賀茂地域でたくさん作られていたということでしょうか?
賀茂なすはいつぐらいから作られていたのですか?

――発祥の地は諸説ありますが、上賀茂では300年くらいの歴史があると聞いています。
山から流れてくる水が最初に入ってくる土地なので水もいいし、夏と冬の寒暖差が激しいことなど、このあたりの風土が賀茂なす作りに適していたのだと思います。

前田最近は亀岡市など他の地域でも栽培しているようですが、採れた地域によって味も変わりますか?
上賀茂産の特徴があるのでしょうか?

――上賀茂ではハウス栽培が主体なので、早く採れる分、終わるのも早いです。毎年5月に行われる葵祭に上賀茂神社にその年に採れた賀茂なすを奉納するので、収穫は5月10日前後からお盆ぐらいまでです。特徴は、大きくて果肉がギュッと締まってきめ細かいことです。

前田料理屋さんでは秋まで食べられると聞いていたのですが、これから出回るのは、上賀茂以外の地域で採れた露地ものということですか。それは知りませんでした

――艶のある濃い紫色をしているのも特徴ですが、賀茂なすは暑さに弱く、日焼けはもちろん、水や肥料が不足しても多すぎても、さらには葉っぱの陰になってしまうだけでも色がボケて艶消しになってしまうので、非常に難しいです。

前田ずいぶんデリケートなんですね。水や肥料の加減は、経験でわかるものですか?

――そうですね。肥料はかなりの量を入れるので、種類とタイミングに注意しながら、なるべくストレスをかけないように気をつけていますが、毎年毎年勉強です。ハウスでも気候に左右されるし、苗を育てるだけでも大変で、昨年は不作でしたが今年は豊作でほっとしています。

賀茂なす

大野容且さんのお仲間で、上賀茂特産野菜研究会会員の森田啓子さん。
ゆかさんが手にしているのは、1kg級の、かぼちゃのように大きな賀茂なす。シャツ¥14,000肩にかけたカーディガン¥14,000デニム¥23,000(すべてアン レクレ)

賀茂なす

(左)油との相性も抜群。素揚げして味噌を塗れば賀茂なす田楽に。
(右)果肉がきめ細かく、密度が高いのが丸ナスとの違い。アクが少なく、 水にさらす必要もないそう。

発祥の地で伝統野菜を守り、ブランド化へ

前田一般的な千両なすに比べると収穫量も少ないのですか?

――少ないですね。1本の木から5枝くらい出てきますが、実が生るのは約15個。
そのうち出荷できるのはせいぜい10個です。

前田手間もかかるし、収穫量も少ないからこそ価値があるのですね。作る人もだんだん減ってきているんですか?

――上賀茂の農家は後継者がたくさんいるので、その点は安心です。
若手農家の有志が集まって、上賀茂特産野菜研究会という出荷団体を作って、共同で種を残したり、情報交換などをしています。

前田賀茂なす以外にはどんな野菜を作っているのですか?

――トマトやキュウリなど一般的な野菜も作っていますが、量で競争ができないので、夏場は9割が賀茂なすで、冬は鷹ヶ峯ねぎなどです。
上賀茂の農家は、昔から見た目より味を重視していて、朝収穫した野菜をリヤカーなどに積んで個人で売り歩く“振り売り”という伝統的な販売形態が現在も残っています。振り売りするには多品目の野菜を作らなければなりません。
最近は軽トラで回ったり、畑のそばに直売所を持つ人も増えてきましたが、これからは品目を絞って、よそにはない希少な特産品を専門的に作っていかなければならないと考えています。

前田どういうところに出荷しているのですか?
東京でもデパートや高級スーパーの京野菜コーナーでときどき賀茂なすを見かけますが、お値段が高いですよね~。地元なら少しお手ごろなのかな~と期待していたのですが……

――うちの場合は契約している料理屋さんや贈答品が主で、残りは卸売市場に出荷しています。東京だと1個千円ぐらいするので倍近い値段ですよね。
地元では色が少しボケたものなんかも味は変わらないので、安く買えますよ。知り合いが畑の横で直売もしているので、案内しましょうか?

前田ぜひお願いします!
本場の賀茂なすを家でじっくり味わってみたいと思います

農園直売所

採れたての上賀茂野菜が手に入る

以前は、野菜を積んで市街地に売り歩くこの地域の伝統的な振り売りをしていたそうですが、数年前に畑に直結した直売所を作り、朝収穫した新鮮な元気野菜を販売している森田啓子さん。
種類も豊富で、おいしい食べ方を教えてくれたり、宅配も受け付けていて、家族構成や予算に合わせて旬の野菜を詰め合わせてもらえます。

京都市左京区岩倉西河原町232 / TEL075-722-3536
6:00~18:00 無休

森田啓子 農園直売所

なすの女王”と呼ばれる賀茂なすは、煮ても焼いても揚げても美味

  • 気軽に楽しめるカウンターのほか、庭に面した落ち着いたお座敷、個室もあります。
  • 素揚げした賀茂なすに田楽味噌
  • 賀茂なす料理

京料理には欠かせない食材のひとつである賀茂なす。歯ごたえがよく、煮炊きしても煮くずれせず、油の吸収も少ないのであっさり仕上がるのがポイント。
火を通すととろけるような美味しさが広がります。京都では、素揚げして田楽味噌でいただくのが定番。
ほかにも、揚げ浸しや炊き合わせ、ステーキ風に焼いて生姜醬油で食すなど、味わい方は多彩。皮が厚いので横に2等分すると器代わりにも使え、詰め物をして楽しむことも。上賀茂に店を構える料理屋さんで、賀茂なす料理のバリエーションを見せていただきました。

乃し

撮影/谷口 京 モデル/前田ゆか スタイリスト/鈴木仁美 ヘア・メーク/山根里江子(ecotto) 取材・構成/秋山美英