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光文社厳選!和食情報ナビ

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道場六三郎氏 銀座 ろくさん亭道場六三郎氏 ©2016 松竹

道場六三郎氏銀座 ろくさん亭

映画本編には“商いの法則” について料理人が語るシーンがある。その中で道場氏はこのように回想している。
「日本中から一番いいものが全部河岸へ来ましたから、僕の場合築地は戦場だったね。
売り買いというのは戦いだと思っている。そういった中で、それがずっと続いてきた中で、この人はこうなんだとわかって認めてもらえてからが本当の付き合いでね……」
また、映画のDVD・ブルーレイに付属の特典ディスクには、未公開インタビューが収録されているのだが、その中で旬についても話している。
「旬というより出盛り。料理屋さんでは旬のちょっと前の“はしり” ね。
“もうこれが出たか” と、客に言わしめ、喜んでもらえるような一歩前のものを使います」

小野二郎氏 すきやばし次郎小野二郎氏 ©2016 松竹

小野二郎氏すきやばし次郎

「築地がなかったら商売にならない」と話すのは銀座を代表する鮨職人の小野二郎氏。未公開インタビューでは、築地に通い始めたころの思い出を懐かし気に語っている。
「朝早く行って人よりも先に行って、どれを取ろうかなというのが楽しみで、私は河岸を休んだことはほとんどなくて。
一番ひどい目にあったのは、朝雪が降っていて全然動かなくて。当時は汐留の方からの貨物の引き込み線が入っていたんですよ。
それが動かないから河岸に行っても魚が何もないんです。トラックも動かない。でも魚が欲しいから朝早く自転車で行って、自転車も走れないから手で持って行ったのに何もなくて。
そんなこともありましたが、今日はどんな魚があるだろうかと、とにかく毎朝行くのが楽しみでした」

油井隆一氏 㐂寿司油井隆一氏 ©2016 松竹

油井隆一氏㐂寿司

人形町の老舗鮨店の主人、油井氏は仲卸との代々続く信頼関係についてこう話す。「築地に通って40年になりますが、一番長い付き合いは穴子屋さんかな。戦前から向こう三代の付き合いになる。
30~40本、下手をすれば50本に1本しかない上質な穴子を一生懸命選ってくれる。それは自分たちにはできないこと。
魚には一つ一つ顔があり、自分の場合は頭が小さくて太っているのが好みで、それをわかってくれている。
朝仕入れに行っている店は8店舗ぐらい。活け物、貝類などそれぞれ専門の人がいるので、自分と相性の合う人から買っている。
目利きの人が必ず一人か二人いるのでその人を常に追いかけています」
そういった仲卸との関係について「それは日本料理のひとつの伝統じゃない?信頼関係がないと築地からは魚が買えないし……」と、絆の強さを語っている。

長山一夫氏 第三春美鮨長山一夫氏 ©2016 松竹

長山一夫氏第三春美鮨

「築地ってすごいの。海幸橋を渡れば嘘八百何でもありだという。騙されたら騙された方が悪い。ここはプロの世界だからって……。そういう世界なんだ」
と、語り始める長山氏も仲卸の存在の大きさについて触れている。
「拾い買いといって、いろいろな店で買う商売人がいるが、拾い買いで最高の魚を手に入れることはありえない。
仲買人が最初の段階から選別しないといい魚は手に入らない」
「今日自分がいらなくても競ってきたら買うよね。それは信頼関係だね。だから仲買人もいい魚を買ってくれるわけ」
旬に関するシーンでは、「はしりの旬、旨さの旬、たくさん獲れる旬と、いろいろな旬があるけど、それぞれの旬を追いかけるのが仕入れの醍醐味」と語っている。

齋藤孝司氏 鮨さいとう齋藤孝司氏 ©2016 松竹

齋藤孝司氏鮨さいとう

仲卸との信頼関係については、斎藤氏も熱く語る。
「台風などで漁師さんが漁に出られないときの仲買さんの努力には感動すら覚える。ないものはないとはっきり言ってくれることと、どこかでは獲れるわけだからそれを引っ張ってきてくれる気持ち。
それは毎年ある出来事で、毎年感じること。魚を買うためには当然お金が発生するけど、それ以上に気持ちというか……」
仲卸たちの緊張感がダイレクトに伝わる鮪の競りのシーンでは、競り落とした鮪を手際よく解体し、部位ごとに小分けにしていく仲卸の仕事ぶりも圧巻で、仕入れに訪れた斎藤氏は鮪についての問いに次のように答えている。「鮪はやはり特別な魚ですね。四番バッターですね。簡単に獲れるものじゃないですから。命を懸けて獲りに行っているわけですから、それを寿司として表現するので思い入れがありますね」

渡邊浩二氏 浅草みよし渡邊浩二氏 ©2016 松竹

渡邊浩二氏浅草みよし

旬について描いた場面では、冬の魚の代表であるふぐを扱う料理人ならではの一言も。
「今は食の安全が求められている時代。
ふぐを専門に扱っているので絶対信用のおける仲買、絶対信用のおける築地から買うことにしている。今まで取れたことのない毒を持つふぐがあるとか、いろいろな情報をもらえるんですよ。
だから、うちは信頼のおける仲買の社長さんにすべて目利きをしてもらって買っています。ちゃんとした免許を持っている人たちの目を通さないと怖くて扱えない。築地からある時期産直に注目が集まったけど、今また築地に戻っているような気がしてならない」
築地に対して、仲卸に対して絶大な信頼を寄せていることが窺える。

奥田透氏 銀座小十奥田透氏 ©2016 松竹

奥田透氏銀座小十

未公開インタビューの中で、築地とは?の問いに「日本の文化だと思います。これは先人たちが築いて来てくれたものです。文化は1日にして成りませんから」と答えている奥田氏。
「最近の異常気象は私たちの想像を超えている。そういった意味では現場とのやり取りが大事ですね」と、急速な自然環境の変化について危惧する言葉も印象深い。
「季節によって美味しくなる魚が違い、それを楽しめるのが日本の良いところ。昔は漁に出たとき自然にたくさん獲れたことが旬につながっていったんじゃないかなと思うんですが、時代の変化と共に漁も専門化し、その時季に狙ってその魚を獲れるようになってきた。
海の中の温度帯によって魚の棲む場所や餌の食いつきが変わっているわけですが、ここ数年急激に変化している自然環境の中で、海の中も変化していないわけがない。
私たちが今まで定義づけていた“この時季この魚がおいしい” というのも全部崩れてきていると感じる」
また、仲卸の役割について、「料理というのは最終的に私たちが食材を貰って、形にして変化させていくものですが、すでに魚が住んでいる環境から始まっていて、それを漁師さんが獲るところも、活き締めをしたり、神経を抜いたり、魚に包丁を入れて手を加えているところからもすでに料理はスタートしているわけです。
私たちが最終バトンをいただくのは仲卸から。そこでの役割はそのまま料理に反映されるので大事な役割だと思っています」とコメントしている。

レネ・レゼピ氏 noma(コペンハーゲン)レネ・レゼピ氏 ©2016 松竹

レネ・レゼピ氏noma(コペンハーゲン)

東京のレストランに期間限定で出店した際に体験した築地の独特な商いについて語るのは、イギリスのレストラン誌が選ぶ“世界のベストレストラン50” で4度首位に輝いたデンマークのレストラン、レネ・レゼビ シェフ。
「築地のビジネスは信頼関係で成り立っている。経済でビジネスが成り立つ欧米とは全く違うやり方だ」
「築地は豊かな食文化と良質な食材を誇るユニークな場所。
まるで食の七不思議のひとつだ。シェフにとって築地は考古学者にとってのエジプトで必ず訪れるべき場所だ」

リオネル・ベカ氏 ESqUISSEリオネル・ベカ氏 ©2016 松竹

リオネル・ベカ氏ESqUISSE

トロワグロ氏の要請で来日し、現在銀座のフレンチレストラン「エスキス」でシェフを務めるリオネル・ベカ氏は日本の四季や旬について次のように語っている。
「日本人と海の関係は神秘的。一人一人が海と深く関わっている。もちろんフランスの料理人も季節感に敏感で、季節ごとの食材にこだわる。その点では日本人と共通しているが、日本に来ると季節や旬という概念をより深めます。なぜなら日本では季節は暮らしの節目を成し、日本人の暮らしには季節感が深く根ざしていて、それは哲学的ですらある」
さらに、仲卸との関係について「フランスでは市場から直接仕入れず、仕入れ業者を通す店が多いが僕は直接魚を選びたい。仲卸の人たちはほぼ全員お店に食べに来てくれた。
僕たちがどんな仕事をしているか理解するためにわざわざ来てくれたのだ。仲卸の人たちとはお互いに深い信頼関係を築いてきた。どういう料理に使う食材を探しているのか伝えると詳しく説明してくれるし、それぞれの魚の種類や特徴に合ったいい調理法のアドバイスをくれる。
それは市場に来ないと聞けないこと」と、仲卸へのリスペクトも話の中から垣間見ることができる。

中澤圭二氏 すし匠中澤圭二氏 ©2016 松竹

中澤圭二氏すし匠

仲卸との密接な関係性について中澤氏が語っている言葉も興味深い。
「築地は人間を売っているのよ。魚を売る前に。人間に惚れて買いに行くんだよね」
「毎日魚を知れている仲卸さんとの出会いは我々の人生を左右する」と話す一方で、未公開インタビューの中では、築地に通い始めた当初“10年、20年通い詰めなければ魚を選る権利はない” という築地のルールを知らず、魚を触って怒られ、“常連ありき” の古い慣習の残る世界だと気づくまでに10年くらいかかったと、若き日の思い出話も披露している。
「悔しい思いが今に見ていろよと、人間を向上させてくれる。
若い頃は悔しい思いをしなくちゃ」と、当時を振り返っている。
さらに、「築地は世界一だけど、それを与えてもらう職人のデメリットもある」とも。
「鮪でもウニでもいつも美味しいものをもらっていると考えなくていい。流通がよくなって、あまりにも築地に地方からいいものが来すぎちゃっている。天下無敵だよね。あまりそうなると怖さもある。
東京で魚を買っていると、こんなに便利に世界中の魚が手に入って、いいお客がいっぱいいて、職人にとっていいかっていうとそれはちょっとクエスチョンだね。悪く言うと過保護だから」と、自戒の念を込めて語るシーンもあり、職人としての覚悟も大切であることが伝わってくる。

有名料理人たちの駆け出し時代の苦い思い出や、外国人シェフたちの驚きの体験談など、なかなか聞くことができない面白い話が満載の未公開インタビューが入った特典ディスクも必見です。

※第三回は、料理研究家や築地の研究家たちの目を通した築地について紹介します。

TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)
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発売・販売元:松竹
©2016 松竹
映画公式サイト http://tsukiji-wonderland.jp

【海外映画祭状況】

  • サンセバスチャン国際映画祭 キュリナリー・シネマ部門正式出品 クロージング作品(2016.9)
  • シアトル国際映画祭 キュリナリー・シネマ部門正式出品(2016.5)
  • モントリオール世界映画祭 ドキュメンタリー部門正式出品(2016.8-9)
  • レインダンス国際映画祭(英ロンドン)ドキュメンタリー部門正式出品(2016.9-10)
  • ベイルート国際映画祭(レバノン) Culinary/Environment 部門正式出品(2016.10)
  • 高雄映画祭(台湾)Food Feast 部門正式出品(2016.10)
  • ハワイ国際映画祭 Eat. Drink. Film. 部門正式出品(2016.11)
  • トロントリール アジア国際映画祭 ドキュメンタリー部門正式出品(2016.11)