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光文社厳選!和食情報ナビ

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NIPPONの「和食遺産」を巡る旅 富山の「白えび」

水深100〜600mの深海に生息し、体長は5〜8cm。透明で淡いピンク色をしているが、鮮度が落ちるとともに透明度がなくなり白くなる。
漁期は4月〜11月で、上品な甘さが特徴。富山湾でしか漁が行われず、希少性が高い。

前園さおりさん、夏の日本海で、透明に輝く海の宝石に出合う

月に漁が解禁となり、今が旬の白えびは富山県を代表する海の幸のひとつ。ここでしか味わえないキトキトの「富山湾の宝石」を求めて、越中へ出かけました。

朝日の中で桜色に透き通る“富山湾の宝石”白えびの水揚げを見学しました

ブルゾン¥18,000 Tシャツ¥11,000 パンツ¥16,000(すべてアン レクレ)
水揚げされた白えび

漁師の親方に、獲れたばかりの白えびを特別に見せてもらいました。
朝6時半には1回目の漁を終えた船が港へ戻り、水揚げされた白えびを素早く下ろして、すぐにまた出漁する。

岩瀬漁港

船から運ばれた白えびは、すぐに異物の除去や大小の選別が行われる。

セリ

傍らでは魚のセリも始まり活気溢れる岩瀬漁港。

富山湾特有の地形が育む希少性の高い白えび

新鮮さを表わす「キトキト」な魚介の宝庫として知られる富山湾。ブリやホタルイカ、ベニズワイガニなど、富山県の魚に指定されているブランド食材をはじめ、豊富な種類の魚が年間を通して水揚げされます。
なかでも白えびは、ここでしか専門漁が行われないという希少な水産物。今まさに旬を迎える白えびを堪能しに、前園さおりさんが富山に出かけました。
まず向かったのは、白えび漁が行われる岩瀬。料亭などに上質な白えびを卸している専門業者「水文」の水上社長に漁港を案内していただきました。

前園白えびが獲れるのは富山湾だけだそうですね。それはどうしてですか?

――白えび自体は駿河湾や相模湾などにも生息しているのですが、専門漁が成り立つほどは獲れず、富山湾でも岩瀬と新湊、水橋の3カ所でしか水揚げされません。

前園そんなに希少なえびなんですか……

――その理由は富山湾特有の地形にあると言われています。水深1、200mに達するほど深い湾で、沿岸から急に深くなる「藍がめ」と呼ばれる海底谷が何カ所もあるのが特徴なんです。そこが白えびの住処として適しているようです。

前園どのくらいの深さのところにいるんですか?

――100〜600mくらいです。港から漁船で15分くらいの近距離に漁場があるので、1回の漁に要する時間は往復を含め1時間半ほど。鮮度のよい状態で運べるのが強みで、1日2〜3回出漁します。

前園そんなに近くで獲れるんですか。ちょっと意外でした。漁の方法は底引き網ですか?

――掛け回し式といって、底引き網漁でも海底に届く手前の中層を引くため中層曳き掛け回し漁とも呼ばれています。潮の流れやえびの動き、網を引くタイミングなどを計算しながら行う難しい漁で、長年の勘と技術を要します。ですから1日のうちでも獲れる量は毎回異なり、船によっても水揚げの量は変わります。

前園この港からは何艘が出漁しているのですか?

――6艘です。そろそろ1回目の漁から戻ってくるころですよ。生きている白えびは透明で薄いピンク色をしています。時間が経つとすぐに透明度がなくなり、白くなってしまうので、水揚げされたばかりの新鮮な状態はなかなか見られませんよ。

前園だから“富山湾の宝石”と呼ばれているんですね。あっ、船の姿が見えてきました。わぁー、すごいすごい!
たくさん獲れましたね。透き通った桜色が本当にきれい!

――白えびは鮮度落ちが早いのですぐ中に運んで選別作業をします。たまにホタルイカや小魚などが一緒に網に入ってしまうので、選り分けます。白えびの場合は、漁師と事前に価格を取り決めておく相対取引という独特の買い付けをするのでセリにはかからず、誰もが買えるわけではありません。

前園本当に貴重なものなんですね。なかなか他県に出回らない理由がわかりました

――昔は地元でしか消費されず、他県には天日干しにして食紅で染めた白えびを、桜海老の代用品として出荷していたんですよ。冷凍技術や流通システムが発達し、剝き身の技術が普及したことで刺身としての需要が急増して、ぐっと価値が上がったわけです。
今は、仕入れたらすぐに漁港の近くにある工場に運んで、-30℃の冷凍庫で急速冷凍して加工しています。

毎朝5時から岩瀬漁港に買い付けに通う「水文」の水上社長は白えびのエキスパート。
職人

漁港で買い付けた白えびは、すぐに工場に運ばれ、急速冷凍して1尾ずつていねいに手で殻を剝いていく。
熟練の職人さんは身を傷つけることなく、1尾につき1.3秒ほどの早業で剝き取っていくそう。

白えび漁が行われる岩瀬は、江戸時代から明治にかけて北前船の寄港地として栄えた港町。廻船問屋の屋敷や蔵など、往時の面影を残すレトロな建物が並ぶ町並みは、観光名所にもなっている。

手作業で殻を剝くことで天然の美味しさを生かす

前園加工というのは、実際にはどんな作業をするんですか?

――刺身や昆布〆にするために、職人が手で1尾1尾殻を剝きます。

前園あんなに小さいのに1尾ずつ手で剝くんですか?
気が遠くなるような作業ですね

――一度冷凍することで殻と身の間に空間が生まれて、きれいに無駄なく剝けるようになるんです。力を入れずにすっと殻を引くのがコツのようで、熟練の職人さんは1時間で2㎏は剝きます。17〜18人で作業していますが、毎日1人10㎏剝いています。

前園手間がかかりますね。機械で剝くのとは味が違いますか?

――全然違いますね。機械剝きの場合は、ローラーで無理やり押し潰すようにして身を出すので、食べ比べたら味の違いがすぐわかります。手作業ならではの美味しさにこだわるために、うちでは加工時に電解酸性水で殺菌処理をしています。味や鮮度はもちろんですが安全で安心して食べられるものでなければ困りますからね。

前園白えび本来の美味しさを味わうなら、やはりお刺身がいちばんですか?

――そうですね。白えびには旨み成分のアミノ酸なども豊富に含まれているので、お刺身を食べると繊細で濃厚な甘みが楽しめます。昆布〆にすると、さらに昆布の旨みが加わり、味が深まるのでこれもおすすめです。

前園そういえば、富山県は昆布の消費量が日本一でしたよね?

――江戸時代に北前船によって北海道から大量に昆布が送られてきたためだといわれていますが、昆布の利用法のひとつとして昆布〆は古くから親しまれてきました。

前園お刺身も昆布〆も、どちらも美味しそうですね。ぜひ食べてみたいです。
来年の春には北陸新幹線も開通して東京から約2時間で行けるようになると聞いたので、また新鮮な白えびを堪能しに再訪したいと思います

水文

手剝き加工と万全の品質管理により極上の味を追求

構える白えびの専門店。代表自ら毎朝漁港で買い付けるキトキトの白えびを、手作業でていねいに殻を剝き、本来の美味しさを生かしてお刺身や昆布〆に加工して料理屋などに納めている。業務用が中心だが、取り寄せも可能。

富山県富山市岩瀬赤田町12-11
TEL・FAX 076-438-8377
Web:http://www.mizubun.co.jp

水文

お刺身、昆布〆、唐揚げ……、キトキトの白えびは楽しみ方も多彩

  • 飛越食彩こし
  • 飛越食彩こし

白えびの漁期は4月〜11月ですが、鮮度を保つために水揚げされてからすぐに急速冷凍するため、今では一年中味わうことができます。
味は淡泊ながら、甘えびを凌ぐ上品な甘みとトロリとした食感が特徴。
本来の旨みを楽しむなら、むき身をお刺身で食すのがお勧め。殻付きのまま唐揚げにしたり、野菜と一緒に天ぷらにするのもポピュラーで、市内の居酒屋などで気軽に味わえます。豊富な魚種が水揚げされる富山湾は、“天然の生簀”と称されるほど。
県内の寿司店では地獲りの旬の魚介のみを手ごろな値段で堪能できる「富山湾鮨」をPRする取り組みも行われていて、白えびは寿司ネタとしても人気です。
また、地元ではパスタやバーガーなど洋の食材としても親しまれています。

飛越食彩こし
白エビバーガー

道の駅 カモンパーク新湊

新湊特産の白えびをたっぷり使った大人気の白エビバーガー

白えび漁が行われる新湊にある道の駅。レストランやテイクアウトなどで名産の白えびを使った豊富なメニューが楽しめます。なかでもファストフードコーナーで大人気なのが、白えびと野菜のかき揚げをオリジナルのバンズに挟んだボリューム満点の白エビバーガー。
フワッとしたパンとサクッとしたかき揚げの組合わせが絶妙です。

富山県射水市鏡宮296 / ☎0766-83-0111
8:00〜21:00(ファストフードコーナー9:00〜19:00、レストラン11:00〜20:30L.O.)無休

撮影/谷口 京 モデル/前園さおり スタイリスト/鈴木仁美 ヘア・メーク/松永奈巳(S.) 取材・構成/秋山美英