和食STYLE

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吉田 類さん
エッセイスト、俳人。BS-TBS「吉田類の酒場放浪記」などで絶大な人気を誇る。昨年のCDデビューに続いて、今年は遂に映画の主演にも挑戦。映画『吉田類の「今宵、ほろ酔い酒場で」』初夏に公開予定(配給‥KADOKAWA)。
倉本康子さん
通称ヤッコちゃん。ファッションモデルのほか、センス抜群の巧みな収納術で大人気のインテリアモデル、レポーターとしても幅広く活躍中。2012年よりBS-TBS「おんな酒場放浪記」(毎週金曜23:30~)に出演中。

類さんが切り開いた居酒屋文化が女性を自由に

倉本約7年間もの長い連載、お疲れ様でした!

初めは単発の企画で僕がSTORY読者に勧めたい居酒屋を2人で5軒、回ったんだよね。回ったんだよね。

倉本そうそう! あのころは類さんがBS-TBS「酒場放浪記」で紹介する昭和の酒場ブームが盛り上がってはいたけれど、今ほどSTORY世代がいろんな酒場に自由に行くような感じではなかった気がします。

それからヤッコちゃんと2人でひと月に2軒回る連載がスタートして。

倉本’12年には『類とヤッコの東京二人で酔える居酒屋50』という単行本まで出させていただいて(笑)。

この10年ほどで酒場の雰囲気もすごく変わった。今、僕がイベントをすると6~7割は女性客だよ(笑)。

倉本ある意味、類さんが女性の酒場進出というか、参入しやすくしてくれた水先案内人だと思います。

女性はマナーがよくて基本的に品が良いから、店側にすごく歓迎されるからね。

倉本確かに女性がひとりで居酒屋に入っても、前ほど変な目で見られないような(笑)。

大体、東京オリンピックの会場問題で話題になっているゴルフ場みたいに、女性差別なんてものがあるのがおかしいんだよ。今やお酒の市場も女性が支えていると言っても過言じゃないからね。

倉本美味しい料理をたくさん頼んで、きちんと評価して、お酒も節度を持って楽しんでくれて、SNSで広めてくれるのが女性客なんですね。

特に日本の40代以上は本当に元気だからね。

倉本まさにSTORY世代(笑)。

元気だけどわきまえてるから、飲みすぎて人にからんだり、店に迷惑かけて出入り禁止になったりしない(笑)。

長江 操さん

客、スタッフ双方の信頼が厚い女将の長江 操さん(79歳)は、亡くなったご主人とともに2代目を継ぎ、早45年以上。

  • 銀鱈の西京焼き銀鱈の西京焼きは上品な味わい。おでん同様、あっさりいただけます。800円。
  • 刺身の盛り合わせ旬の刺身の盛り合わせは2,500円から。厳選素材が神田に通う通の客の舌も唸らせます。
  • おでんおでんは1品200円から。名物の木綿豆腐にはねぎと七味と鰹節がトッピングされています。
  • てっさ11月~3月が旬のてっさ(天然とらふぐのお刺身)は2,000円(下関産)から。
  • かにサラダかにサラダは1,000円。大きな身が何本も並んで食べ応えもバツグン。

SNSが「IZAKAYA」文化を世界に発信

倉本ですよね。SNSと言えば、私でもFacebook経由などで海外の方から声をかけられたりするんですが、みんな「IZAKAYA」というものにすごい興味津々。

今、新宿ゴールデン街に集まっている客の多くは海外の方だよ。それだけの魅力が日本の酒場にはあるんだ。僕が40年以上も前にパリでやってたことと同じ現象が今、日本で起きてるんだよね。

倉本40年以上! スゴい(笑)。本当に類さんは時代の先駆けですよね。今はディープな界隈にも女性が多くて。昔は知らない店の扉を開けるのは勇気がいったのに。

以前は一部の人だけで閉じてた情報が外に開かれたからね。

倉本とはいえ老舗になればなるほど流儀も厳しいから、情報を知ってるからといってむやみに場を荒らさないようにしないとダメですよね。女性もそこにふさわしいセンスが認められないと。

場数を踏んで成長してもらいたいね。

倉本いろんなタイプの酒場に挑戦すれば自然にいい空気感を纏えるようになるのかな。

まずは自由に、興味を持ったら出かけてみるといいよ。だってお酒は最高のコミュニケーションツールだから。いくら若者が酒を飲まなくなったとか宅飲み、家飲みが多くなったとか言っても、仲間がいなかったら生きていけないからね。

倉本それに気づかせてもらえるのが酒場なんですね。

いい酒場でいいお酒の飲み方を心がければ、人間も熟成した酒のようにまろやかになっていく。

倉本人を育てて成熟させてくれる居酒屋文化、大切!

ずっと守っていきたいよね。

倉本女子一同、これからも頑張ります!(以上、敬称略)

吉田 類

類さんがSTORY読者
行ってほしい居酒屋①

尾張家

神田

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☎03-3251-4320
千代田区鍛冶町1-6-4
17時~22時半
土日祝日休

大きなおでん什器を囲む
ピカピカのコの字カウンターに座れば、
自ずと背筋がピンとする粋な空間

関東おでんの老舗・尾張家は、神田駅からほど近い名店中の名店。
昭和2年から続く店の女将は長江 操さん。
「お客様には100歳まで大丈夫なんて言われます」と笑う女将がカウンターの中でお客様をもてなす姿は、まさに古き良き昭和酒場を伝える理想形。
官僚や社長、大手企業ビジネスマンなど、客層はそうそうたる顔ぶれ。
今年80歳を迎える女将が笑顔で毎日愛情込めておでんを煮込みます。
「仕込みは早朝から。おでんのつゆは毎日入れ替えて、グラグラ煮立たせないように付きっきりなのよ」。

類さん&ヤッコちゃんお勧めの東京酒場で、
奥深さを堪能して!

吉田 類

類さんがSTORY読者
行ってほしい居酒屋②

焼鳥よつは

堀切菖蒲園

  • 鶏わさ
  • shigekoさん

ジェンダーフリーの“女将”に刺激され癒されて。
ひと串入魂の焼鳥はまさに絶品

京成線の堀切菖蒲園駅前にあるこちらのお店はなんといっても店主がチャーミング。レディスを着こなすメンズでお名前はshigekoさん。’11年3月にオープンして今年で7年目。
もともとはサラリーマンだった女将ですが、料理が好きでお店を持つ夢を実現させました。「好きなことをしてそれが全部自分に跳ね返ってくるのが面白いの」だそう。

  • 串焼き
  • 手羽大根の煮込み
  • 鶏皮ポン酢
  • クリームシチュー
焼鳥よつは
☎ 03-5680-0106 / 葛飾区堀切4-52-5
18時~23時ごろ 日曜休(完全予約制、全席禁煙)
吉田 類

類さんがSTORY読者
行ってほしい居酒屋③

赤垣

浅草

  • 〆鯖
  • 吉水 正さんと奥様の麻里さん

浅草で100年。美男美女夫婦が作る〆鯖が
評判を呼び、海外からも食通が通う古き良き酒場

類さんが「浅草と言えば赤垣」と太鼓判を押すこちらのお店は、来年創業100年を迎える老舗酒場。
3代目店主の吉水さんは現在、奥様と2人で看板を守っています。「赤垣」の名を一躍世に轟かせたのは〆鯖。常連客から「脂のバランスが最高」と言われるひと皿は類さんも絶賛。今では訪れる客の9割が注文する名物目当てに、今晩もカウンターが賑わいます。

  • 鯨の唐揚げ
  • あん肝
  • 白子ぽん
  • 蛤の酒蒸し
赤垣
☎03-3844-2327 / 台東区浅草1-23-3
17時(土曜16時、日曜15時)~23時 水曜休
倉本康子

ヤッコちゃんがSTORY読者
行ってほしい居酒屋①

こんちゃん

梅島

  • もつ鍋
  • 関口浩二さん

確かな腕と愛情と。素材を見極め、
手を動かし続ける店主の誠実さが隅々に行き渡る店

ヤッコちゃんが「料理の味、盛りつけともに小料理屋な気分で行く」こちらは、50年目を迎えるお客様満足度100%のお店。
理由は店主・関口浩二さんの料理や店作りに対する丁寧さ。「お客様の貴重な時間を裏切らないように、一切手抜きなしで料理に向き合う」姿勢が魅力です。

  • 春野菜の胡麻和え
  • 刺身盛り合わせ
  • ホルモン鍋
こんちゃん
☎ 03-3887-3878 / 足立区梅田6-32-4
17時~23時半(L.O.)(日祝日16時~22時半L.O.)
月曜休
倉本康子

ヤッコちゃんがSTORY読者
行ってほしい居酒屋②

富士屋本店

渋谷

  • ポテトサラダ
  • 原川ヨシエさん

渋谷の活気を支え、栄枯盛衰を見守る
立ち飲み酒場は文化遺産に認定したいほど

ヤッコちゃん〝最愛の店〟富士屋本店は渋谷駅から国道246号線を渡った所にある立ち飲み屋。映画や芝居のポスターが貼られた階段を下りると、60畳以上はあろうかという空間が広がります。カウンターがジグザグに延び、お客さんがギッシリ立ち飲みしている様は圧巻。

  • 舞茸の天ぷら
  • ハムキャ
  • 玉子入りジャンボ油揚煮
富士屋本店
☎ なし / 渋谷区桜丘町2-3
17時~21時(L.O.)日祝日、第4土曜休
倉本康子

ヤッコちゃんがSTORY読者
行ってほしい居酒屋③

なだ一

渋谷

  • おでん
  • 女将のちーちゃん

渋谷のんべい横丁を立ち上げた父を先代に持つ
女将が守るおでんの温もりは、家族の絆を伝える味

42軒の小さなお店が軒を連ねる「渋谷のんべい横丁」、その歴史は60年以上。この店の女将は富永千登勢さん。昭和25年に東急本店通りで屋台を引いていたお祖母様が始められたそう。「STORYで類さんと訪れて以来、何度となく通う店」とヤッコちゃんも常連です。

  • まぐろのほほ肉ステーキ
  • 刺身
  • さんまの塩焼き
なだ一
☎ 非公表 / 渋谷区渋谷1-25-10
18時~24時 日祝日休

撮影/吉澤健太 ヘア・メーク/コンイルミ〈ROI〉スタイリスト/大碕ちほ 取材・文/柏崎恵理

STORY 2017年5月号より