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光文社厳選!和食情報ナビ

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NIPPONの「和食遺産」を巡る旅 岡山の「鯛」

瀬戸内海沿岸では桜が開花する頃、外洋から産卵のために内湾の浅瀬に入ってくる真鯛を桜鯛、花見鯛と呼び、4~5月が鯛の旬とされています。
写真は岡山の「割烹かどや」の瀬戸内産の活鯛。兜は郷土の祝い料理「鯛そうめん」に使われる。

倉本康子さん、「塩むし桜鯛」で瀬戸内の旬を満喫

昨年、和食がユネスコの無形文化遺産として登録されました。
海の幸に山の幸、四季折々の食材に恵まれた日本には、各地に伝わる郷土料理があります。
まだまだ知らない美味しい食材や産地ならではの料理法を知りたい! という思いから全国の旬の味覚を求めてSTORYモデルが旅をします。
第1回の食材は春に旬を迎える「桜鯛」。やっこちゃんが瀬戸内へ向かいました。

倉敷・玉島に受け継がれる極上の鯛料理「塩むし桜鯛」に出合いました

上質な天然鯛のみを厳選

主に長崎の天然真鯛を使用。腹に包丁を入れて、えらから内臓を抜き、身が崩れないように竹のへらを刺して形を整えます。

藁を編んだコモに
ひとつずつ包み込む

農家から集めた藁で作ったコモに包むことで粗塩の不純物や塩味の浸透を防ぐ効果が。

2時間蒸し上げてから乾燥させる

本窯に煮沸した粗塩を敷き詰め、網を敷いた上にコモに包んだ鯛を並べます。
さらに網を敷いて100度の塩を盛り、木のふたをして蒸し上げます。約2時間蒸したら固まった塩をスコップで慎重に取り除き、すぐ冷却室に吊るして30~40分乾燥させます。

製塩業の浜子たちから伝わった“塩むし”に由来

昔から、瀬戸内海沿岸では良質な鯛が獲れることで知られていますが、岡山に江戸時代から受け継がれる美味しい鯛の伝承料理があると聞いて、倉敷市西部の玉島を訪ねました。
お話を伺ったのは、名物の「塩むし桜鯛」を製造する「志ほや」。極上の逸品が生まれる現場を特別に見せていただきました。

倉本どのくらい前から作っていらっしゃるんですか?

――昨年ちょうど100年を迎えました。瀬戸内一帯は古くから塩づくりが盛んで、もともとは江戸初期から約300年にわたって製塩業に携わっていたのですが、当時塩田で働いていた浜子たちが、漁師からもらい受けた鯛を窯から出した塩の中に埋めて蒸し焼きにしたのが始まりと伝えられています。のちに、塩づくりは専売制となり、製塩業から退くことになったのですが、塩田の副産物として生まれたこの技法と味を継承しようということになり、以降「塩むし桜鯛」を専門に製造することになりました。工程を順にご説明しますと、まず、鯛は天然物の真鯛のみを使います。

倉本わぁーきれいな鯛ですね。やはり春の鯛がいちばん美味しいんですか?

――産卵に入る春が旬とされていますが、12~2月ぐらいに獲れる寒鯛も脂ののりがよくて、美味しいですよ。

倉本桜鯛と呼ばれるのは瀬戸内海の鯛だけですか?

――春に産卵のために外洋から瀬戸内海に入ってくる真鯛を桜鯛と呼ぶのですが、かつては大量の魚影が島のように見えたことから魚島時などと呼ばれていたそうです。ただ、各サイズを安定して確保するのが難しくなったため、以前は宇和島沖の鯛を中心に使っていましたが、現在は長崎の天然物を仕入れています。

倉本一年中製造されているんですか?

――昔ながらのやり方なので、夏は暑くて作業ができないため7~9月は休みます。

倉本鯛は下ごしらえをしてあるのですか?

――内臓は抜きますが、鱗はあえて付けたまま味付けなどは一切せず、藁を編んだコモにひとつひとつ包んで塩だけで蒸し上げます。

倉本鱗を取らないのですか?

――召し上がっていただくとわかると思いますが、ひとつの窯に500㎏もの塩を使っていますが、鱗があると身の中にまで塩が浸透するのを防いでくれるので、塩辛くならないんです。

倉本そうなんですか。塩むしなので塩味が効いているのかと思っていましたが、意外ですね

旨みが凝縮、身もふっくら

尾のつけ根から頭に向けて、表裏とも皮ごとはがし、特製醬油に付けていただきます。
鱗をつけたまま蒸しているのでほのかな塩の風味が特徴。
はがした皮を油で揚げて鱗せんべいにして味わうのもおすすめだそう。

藁の香りと塩の風味が美味しさの決め手に

――その後、100度に加熱した粗塩をスコップで汲み上げ、本窯に並べた鯛の上下に敷き詰めて、2時間ほど蒸し上げます。

倉本すごい蒸気! こんなサウナ状態の中で重たい粗塩を運び入れる作業はかなりの重労働ですね

――昔ながらの力仕事ですからね。蒸し上がってから塩を取り除くのがまた重労働なんです。粗塩がカチカチに固まっていますので、中身を傷つけないようにスコップで掘り起こしながら取り出します。蒸し上がったら30分ほど乾燥させて完成です。よろしければお味見してください。

倉本お言葉に甘えて、いただきます。まずは、お醤油だれにつけずにそのまま味わいますね。うーん、身がふっくらして旨みが濃いですね。あんなに塩を使っているのにまったくしょっぱくないなんて不思議。ほんのり藁の香りもして美味しーい! ただ蒸したり、焼いたりしたものとは全然違いますね

――塩加減が控えめなので、鯛めしなどの料理にも使えます。鱗の付いた皮の部分は、素揚げして皮せんべいにしても美味しいですよ。

倉本なるほど。これは差し上げたら喜ばれるでしょうね。豪華だし、とくにお正月におすすめですね。パッケージも味があるし

――伝八笠といって、かつて浜子たちが塩田の作業中にかぶっていたもので、この中にひょいと包んで塩むし鯛を持ち帰っていたそうで、それを包装に取り入れました。梱包にも気を配っていて、身を圧迫して水分を飛ばさないように、食品用の窒素ガスでふっくらと真空梱包しています。

倉本美味しいお取り寄せを発見できてうれしいです。今日はごちそうさまでした

志ほや

お祝いの席や集まりに。食卓が華やぐ「塩むし桜鯛」

塩むし桜鯛、鰆の味噌漬け、ままかりの酢漬けなど郷土料理や、農家直送のフルーツを扱う贈答品の専門店。岡山本店、玉島店のほか天満屋岡山店、福山店、岡山髙島屋にも出店。電話、インターネットからも注文可能。塩むし桜鯛は受注生産で¥5,000~¥20,000(税別)。

岡山市北区表町1-7-65 / TEL 0120-753-408
受付け時間 9:00~17:00 / FAX 086-233-2251 日曜・祝日休
Web:http://www.shihoya.co.jp

志ほや

新鮮な魚介に頰が緩みっぱなし!! 岡山の名物料理を堪能しました

  • 割烹 かどや
  • 絶対味わいたい岡山の3大名物

瀬戸内でも鯛はハレの日に振る舞われる特別な魚で、伝統ある郷土料理が今に伝えられています。そのひとつが「鯛そうめん」。
岡山県南西部にある手延べそうめんの産地・鴨方町の特産のそうめんと、瀬戸内漁港に揚がる縁起物の鯛を組合わせた祝い料理で、白波に泳ぐ鯛を大皿に表現し、結婚式や棟上げ式で供されたそう。
市内の割烹でも「鯛そうめん」を名物とする店もあります。
瀬戸内海では一年を通じて多種類の魚が揚がるので、鯛以外にも鰆やままかりなど、地元の新鮮な海の幸を楽しめます。

割烹 かどや

撮影/谷口 京 モデル/倉本康子 スタイリスト/加藤万紀子 ヘア・メーク/松永奈巳(S.) 取材・構成/秋山美英