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仙禽
仙禽

水の“テロワール”を引き出す蔵話題の「仙禽」の造り手に会いに行く

酵母に頼らない酒造りを標榜し、地元の水、そして古くから蔵に棲みつく酵母の力で酒を醸す蔵がある。それこそがワイン用語でいうところのテロワールにこだわった「仙禽」だ。時代に逆行するような古式製法、驚くほどの甘酸っぱい味の酒、そこまでやるかというこだわりの連続に、前川泰之も興味津々。これこそが日本酒の最先端、その矜持をご覧あれ。

前川泰之のSAKEを巡る冒険

蔵見学の終盤、ラベル貼りの作業を見るや挑戦したいと前川泰之。「あっ、も少し下……、あっ斜めです」というスタッフさんのアドバイスを聞きながら貼り終えた一本はやはり不格好で売り物としては……。自腹で購入決定?

古くて新しい酒作り。日本酒の未来はここに。

ジャケット¥53,000(ハリス ウォルフ ロンドン/ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館)ジレ¥16,500(スコッチ アンド ソーダ/コロネット)
シャツ¥19,000(ティントリア マッティ/ビームス 銀座)パンツ¥27,000(ジーティーアー/八木通商)チーフ¥3,500
(トゥモローランド)

常識を覆した酒造り、新たな日本酒の世界へ

突然ですが皆さん、ドメーヌという言葉をご存じですか? これはワイン用語で、ぶどう畑を所有し、ぶどうの栽培、醸造、熟成、瓶詰までを自分たちで行う生産者のこと。フランスではボルドーのシャトーに対し、ブルゴーニュのドメーヌが……。
「おいおい前川、今度はワインかよ」という、皆様の激しいつっこみ重々承知しております。
不肖・前川、まだまだ日本酒道を極めている最中。浮気などは一切しておりません。実は今回はワインならぬ日本酒造りで、このドメーヌ化を目指した若き兄弟に会ってきたのです。

訪れたのは栃木県さくら市。のどかな田園風景の広がる景色の中で、江戸時代より酒を醸し続ける、由緒ある酒蔵が「仙禽」。
ここ数年、クラシックシリーズやモダンシリーズ※1(大好き)を中心に、次々と個性あふれる酒を生み出し、日本酒に新たな革命を起こしている話題の蔵だ。先代の時代に普通酒を他社へ桶売り※2していた同社。
それでは、この蔵に未来はないとほぼ180度方針転換したんだとか。そんな新たな酒造りを模索したのが息子であり現蔵元の薄井一樹氏であり、杜氏を務める弟の真人氏。
今回は一樹氏に、仕込み真っ最中の蔵を案内してもらったんだけど、この一樹氏がなかなかの曲者かつ熱い男なのだ。

もともとは若き日に蔵を飛び出し、ソムリエとして活躍。だからこそ完全ドメーヌ化という考えに至るのだけど、日本酒のテロワール※3は水にありと、地元・鬼怒川水系の硬水を軸に、蔵付き酵母と、米も蔵の地下水や仕込み水の水脈上にある田圃に限定。
酵母に頼らない酒造りに挑戦しているのだ(そんなこと可能なのか?)。
「今の日本酒ブームに満足していてはブームが去ればダメになってしまうかもしれません。だからこそ蔵の個性で、ここでしか生まれえない酒を目指しているのです」とニヤリ。

最初は口数少なく、かつ眼光鋭く、俺の質問や一挙手一投足をチェックしていた一樹氏。
気がつけば俺のあふれる日本酒愛(本気!)を感じてくれ、あれもこれも、ニヤリと不敵な笑みを浮かべつつ教えてくれるのだ。

酒造好適米ではない亀ノ尾を7%(!?)まで削ったフラッグシップ酒のタンクを見せてくれニヤリ、鑑評会にあえて山田錦を使わない理由にニヤリ。すべては話題づくりであり日本酒の反響のため。蔵の、いや日本酒の未来を背負う男の志は、本気で熱かった!

仙禽
仙禽

1.昔ながらの酒造りにこだわる「仙禽」の中で唯一
と言っていいハイテクがスマートフォンを使った麹の温度管理。

2.今なお、大切な麹室での床揉み作業は一樹氏と弟の真人氏の2名で行っている。

3.木桶で仕込んだ新酒は、まもなく絞りの時。「うわぁ~、その時に来たかった」と本気で悔しがる前川氏。桶の中まで顔を突っ込み、その香りを堪能した。

仙禽
仙禽
仙禽
仙禽
仙禽

4.蔵付き酵母を使う分、年による味の違いも仙禽のお酒の特徴。酵母に頼らない酒とは、つまりはリスクとの戦いでもある。

5.「麹室での寝ずの番は、熱出した子供みたいなものです」と一樹氏。温度が下がれば毛布をかけ、今度は上がりすぎないよう目が離せないと嬉しそうに笑う。

6.左より仙禽モダンの雄町と無垢、仙禽クラシックの亀ノ尾と山田錦。ちなみに一番右のボトルは前川氏によるラベル貼り。
モダンシリーズは酸が強く洋食に、クラシックは和食に寄り添うように設計されている。

7.磨き7%の亀ノ尾の米粒を見て「面倒くさいことが好きな人だな~」と笑う前川氏。「世界一の磨きだと思います」と微笑む一樹氏。

クラシック&モダンシリーズ ※1現在の仙禽を支える主力ブランドで、食中酒として清涼感とジューシー感を持つモダンシリーズがまずは誕生。ソースやマヨネーズなどビネガーを多用する現代の食事にマッチするよう開発。
その後、造られたクラシックシリーズは和食の良さに立ち返り、出汁に寄り添うような優しい味わい。
桶売り ※2酒類を販売容器に詰めずに、原酒のまま製造業者間で売買すること。
小さな蔵が桶ごと大手に売る桶売りが全盛を迎えたのは昭和30年代。
40年代のデータでは全国に4000弱の蔵が存在していたが、そのうち80%以上が桶売りをしていたという。
テロワール ※3フランス語で土地を意味するテロワから派生した言葉で、ワインやコーヒーなどに現れる畑の気候、地勢、土壌の個性などを表す。
仙禽
仙禽(せんきん)

創業文化3年より続く、栃木の老舗蔵。現蔵元の薄井一樹氏は十一代目であり、新たな日本酒造りに着手。甘みと酸味のバランスを追求した日本酒は今までの常識を覆す味わい。
栃木県さくら市馬場106 ☎028-681-0011

前川泰之
1973年生まれ。俳優。ドラマ、映画、バラエティで活躍。NHK大河ドラマ『真田丸』では武将春日信達役の熱演が話題に。近況はアメブロ「前川泰之Official Blog」でチェックを。趣味は釣り、アウトドア、神社巡り。

Gainer 2016年5月号より

撮影/寿 友紀 スタイリング/中西ナオ ヘア・メーク/堀 紘輔(+nine)取材・文/大西健俊