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縁ある一杯。SAKE COMPETITION優勝の「磯自慢」自慢の蔵を訪ねる

全国から1,028点が出品し4部門に分かれてブラインド審査が行われた「SAKE COMPETITION 2015」。
受賞の瞬間に立ち会った前川泰之が、日本酒の基本でありCPに優れ、幅広い飲用温度帯で楽しめる日本酒が数多く存在するカテゴリー「純米酒部門」金賞の蔵元を訪ね、酒造りの秘訣にグイグイと迫り、呑んだ!

前川泰之のSAKEを巡る冒険

純米酒部門金賞の実力は本物。次に狙うは4部門全制覇⁉

ヘルノのコート¥105,000スパルウォルトのスニーカー¥53,000(共にトゥモローランド)
メゾンフラネールのニット¥54,000エストネーションのシャツ¥14,000同パンツ¥21,000(以上エストネーション)

徹底した洗米と静岡酵母で米由来のクリアな酒を実現

新酒造りのさなか訪問した「磯自慢酒造」。社長の寺岡洋司さんが歓待してくれた。昨年10月から本醸造系の酒造りが始まり、山田錦の収穫後に吟醸系を手掛け、年明けの寒さが増す時季に満を持して大吟醸系を醸すそうだ。

まず驚いたのが洗米。手作業で酒米を研いで米ぬかを洗い流し、さらに機械で水を流し攪拌しながら完璧に洗い切るらしい。仕上げに限定吸水※1させても水がまったく濁らないからスゴイのなんの!
「うちの蔵では10㎏の酒米に対して350ℓという大量の水を使います。電子顕微鏡で見ると八角形の結晶がくっきり鮮明に見えるほど」と、寺岡さん。

次に向かった麹室では、麹屋の待井由朗さんが黙々と作業をしていた。さらして、包む、の作業を繰り返すと表面が乾燥してキラキラしてくる。50時間も経つと麹菌が増えて胞子まで見えるらしい。蒸し米の表面に麹を2~4カ所しか繁殖させず、菌糸を米の内部にしっかりと食い込ませるのだとか。
「うちの麹は派手。大きくハゼるのが特徴」らしく、なるほど一目瞭然だ。この時期は昼夜問わず3時間おきに温度調整や空調管理に掛かりっきり。赤ちゃんを持つお母さんみたいだよね。

お次は酒母室。麹、冷ました蒸し米、南アルプスの伏流水、そして優良な酵母を添加し、純粋培養。3~5日目の段階では室温を下げて酒母をいじめるので温泉の硫黄のようなストレス臭が生じるそうだ。
「この臭いが出るとしめしめ(笑)。その後、温度を上げてやると3日後には吟醸香が出ます」とマゾっ気をのぞかせる寺岡さん。確かに、リンゴや洋梨のような香りが立ち上っていた!

兵庫県特A地区東条産山田錦の使用が圧倒的に多い中、金賞を獲得した特別純米酒は赤磐雄町※2を使用しており、寺岡さんによれば「ややこしい柔らかい」酒米で、酵母菌の選定に3年も費やしたそうだ。
「酵母は静岡酵母を使用しています。生みの親の河村伝兵衛※3さんが使えると判断した蔵にしか出さなかった酵母で、35年間使い続けています。酒がへこたれず長持ちするし飲み飽きない。素晴らしい酵母です」と太鼓判。搾り立てを即試飲させてもらったけれど、柔らかく透明感があってキレイな味だ。「うちの酒は名器のピアノのように透明感のある音色。クセがなく米由来のクリアな味わいがするでしょ?」と誇らしげな寺岡さん。お世辞抜きに本気でうまい! 言葉も忘れたよ。
「信頼できる酒販店さんに支えられながら階段を一段一段上ってきた結果。今後は全部門制覇したい(笑)」と意欲的な寺岡さん。よ~し、俺もこの勢いにあやかって今年も日本酒愛を貫くぞ(←呑む気マンマン)。

磯自慢酒造 磯自慢酒造
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  1. 左から、特A地区の酒米を使用した「大吟醸純米エメラルド」、春の限定酒「純米大吟醸スプリング・ブリーズ 42」「純米大吟醸(3字秋津)ブルーボトル」、磯自慢酒造のスタイルを伝える「大吟醸 一滴入魂」。
  2. 洗米は品質の優れた酒を醸す第一歩であり、第二の精米と言われている。手作業と機械を併用し、完璧に洗い切った後、時間を計って限定吸水を行う。
  3. 寺岡社長の右の方が9代目となる息子の智之氏。20代という若さで麹室を任せられている頼もしい存在。
  4. 一粒一点くっきりの麹造りをも可能な、神業とまで称された多田信男杜氏のもとで修業を積んだ麹屋3年目の待井由朗氏。
    この日は総杉造りの麹室で「東条山田錦」50%の麹作り。厚さが均等になるよう返して乾燥させる。昼夜問わず寝る間も惜しんでの作業。
  5. エアークラックに雑菌が繁殖しないよう内側にガラスを焼きつけた耐食性の高いグラスライニング製のタンクを使用。
  6. 菌の植え付けが少なくハゼ込みが少ない「派手」な麹を見極め中。50時間を経過するとキラキラとまるでダイヤの様。
  7. 搾り立ての特別純米酒を試飲。口当たりは柔らかく透明感を感じさせるクリアな味わいに驚愕。
  8. うますぎてレポートを失念する。この表情が味わいを物語る!?
  9. 南アルプスの伏流水(軟水)を仕込み水に、自社保存の酵母、冷蔵酒母室で酒母を醸し、
    全国に先駆けて冷蔵庫内で酒造りとタンク・瓶貯蔵に挑戦した寺岡洋司氏。
限定吸水 ※1磯自慢酒造では片手にストップウォッチを持ち、米の表面のぬめりを完璧に洗い流しながら、
米本体に限定した水分を秒単位で吸水させる。
赤磐雄町 ※2現在主流の山田錦や五百万石のルーツにもなった品種であり、日本酒最古の酒米。生産量の約95%を岡山産が占める。
長い草丈と大きい心白が特徴。「幻の酒米」と呼ばれ、栽培だけでなく酒造りも難しいとされている。
河村伝兵衛 ※3元・静岡県沼津工業技術支援センター研究技監。約40年にわたり静岡県内で日本酒の研究開発と醸造指導に尽力し、
多大な功績を遺した人物。静岡酵母の生みの親として知られる。
酒友 磯自慢酒造
酒友 磯自慢酒造

天保元年(1830年)創業。東に駿河湾、伊豆半島、富士山を仰ぎ、北北西に南アルプスの南端が控えるという焼津で唯一の老舗酒蔵。
吟醸酒を広めてきたパイオニアでもある。
●静岡県焼津市鰯ヶ島307/☎︎054-628-2204

前川泰之
1973年生まれ。俳優。ドラマ、映画等マルチに活躍。
NHK大河ドラマ「真田丸」に出演。近況はアメブロ「前川泰之Official Blog」でチェックを。趣味は釣り、アウトドア、陶芸、など。オスカープロモーション所属。

Gainer 2016年3月号より

撮影/寿 友紀 スタイリング/中西ナオ ヘア・メーク/山口理沙(+nine)取材・文/粂 真美子