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第十回 料理研究家 後藤加寿子さんの「和食で食育」

改めて「うまみ」ってなんでしょう?「うまみ」を伝えるための母と子のコミュニケーションについて。

子供の味覚について、きちんと考えたことはありますか?
ファストフードやインスタント食品など濃い味に舌が慣れた子供は味覚が衰えがちで、五味を感じ取ることができないケースも増えていると聞きます。
味覚が未発達な大人になってしまう前に、いま一度食生活を見直してあげてください。
そして、和食のベースである「うまみ」は日本人が見出した特別な味覚であること、素材本来のおいしさを引きたてる存在であることを、毎日の食事からきちんと伝えてほしいのです。
今回は後藤先生が子供たちを相手に行っている「五味」を伝えるカリキュラムの一部をご紹介。
是非ご自宅で、子供たちとこんなコミュニケーションを試していただきたいのです。

第十回 料理研究家 後藤加寿子さんの「和食で食育」

子供たちに教えておきたいのは〝五味〟。
そして〝うまみ〟は日本人が大切にしたい感覚だということです。

  • うまみ
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うまみ

東京や海外の小学校から招かれて、味覚やうまみについて子供たちに話をする機会も多い後藤さん。
この日は、9歳~10歳の子供たち4人に甘味→金平糖、塩味→塩昆布、酸味→梅干し、苦味→カカオ70%のビターチョコレート、うまみ→出汁という、それぞれの味を代表する食材を使って五味を体験してもらうことに。
目の前に置かれた食材に子供たちも興味津々。言葉で説明するだけでなく、実際に舌で感じる感覚を大事にしながら楽しく授業は進んでいきます。

  • うまみ
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うまみ

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甘い、しょっぱい、すっぱい、苦いという4つの味覚を順番に体感した後に、昆布出汁を口に含んでうまみの味をしっかり覚えてもらう五味の体験授業。
ラストは、鼻をつまんで柚子を甘く煮たものを食べて、手を放したときに感じる香りを体験。鼻や目、耳を使って五感で味わうことの大切さも伝えます。
うまみについてまとめたメモもわかりやすいとお母さんたちからも好評。

うまみ

「実験みたいで楽しい」と、終始笑顔の子供たち。「うまみ」は日本料理に欠かせない大切なものであることを説明して、講義は終了

後藤先生これから「うまみ」についてのお話をします。みなさん、おいしさはどこで感じますか?

――――舌です(一同)

後藤先生そうですね。舌で感じるおいしさには、5つの味があります。みなさんの目の前にその5種類を用意しました。順番に食べてみてどんな味がするか教えてください。まずは左上の黒いものから。これはなんだかわか りますか?

――――こんぶ?

後藤先生正解。これは塩昆布です。どんな味がしますか?

――――しょっぱい!(一同)

後藤先生その通り。これは塩味ですね。では次に梅干しを食べてみて。

――――わぁ、すっぱ~い!(一同)

後藤先生見てる方もすっぱくなっちゃうね。これが酸味です。次はチョコレートを食べてみて。どう?

――――苦~い!

――――最初は苦いけど、だんだん甘くなってきた。

後藤先生そう。苦かった? これは甘いチョコレートではなくて、カカオ70%の苦味の強いチョコレートです。では次。金平糖を食べてみて。

――――甘い。

――――カリカリしてて甘い。

後藤先生みんなが大好きな甘い味がしますね。これまで、しょっぱい、すっぱい、苦い、甘いという4つの味を試しました。今度はコップに入ったものを飲んでみてください。さあどんな味がするかな?

――――お味噌汁っぽい。

――――こんぶのような気もする。

――――かつおぶしの味かな~。

――――出汁の味がする。

後藤先生みんなすごいね。今飲んでもらったのは昆布だけで出した出汁です。この味を「うまみ」といいます。今まで味わった4つの味の中では甘味に一番近いけど、どの味とも違うよね? 深いコクとまろやかさが「うまみ」の味。お味噌汁やうどん、おそばなど、汁物を食べたときにも感じると思うので、“この味は「うまみ」だな”と、覚えておいてください。そして、しょっぱい、すっぱい、苦い、甘い、に「うまみ」を加えたものを「五味(ごみ)」と言うことも覚えておいてくださいね。

「うまみ」は日本人が発見した特別な味。
日本人は昔から「うまみ」を上手に料理に生かしていました

後藤先生「うまみ」はいろいろな食材に含まれていますが、和食ではとくにお出汁にたくさん含まれています。代表的な出汁はかつお節と昆布を使って作られる日本料理に欠かせないもの。かつお節の中に含まれるイノシン酸と、昆布に含まれるグルタミン酸が「うまみ」を作り出します。
実は、「うまみ」を発見したのは日本人。今から100年以上前の1908年に池田菊苗博士によって発見されました。ところが、「うまみ」が世界に認められるようになるまでには長い時間がかかりました。外国では、塩味、酸味、苦味、甘味の4種類しかないといわれていて、出汁の味が日本独特のものだと世界の人が気付いたのは4~5年前のこと。ようやく「うまみ」の存在が認められるようになったのです。
実は洋食で使われる食材の中にも「うまみ」は含まれていて、たとえば、お肉やチーズ、またトマトやたまねぎの中にもあります。うまみ成分はアミノ酸系(グルタミン酸)と核酸系(イノシン酸)に大きく分けられ、この2種類が一緒になると、相乗効果でうまみがぐんと増します。昔から昆布(グルタミン酸)とかつお節(イノシン酸)を合わせて出汁を取っていた日本人は、経験的にうまみ成分を上手に料理に生かす方法を知っていたのです。

おいしさは舌だけで感じるとは限りません
鼻や目、耳、五感全部で感じるものです

後藤先生最後に、甘く煮た柚子を、まず鼻をつまんで食べてみてください。口に入れましたか? では鼻から手を放してみて。何か感じる?

――――わぁ~香りが鼻に広がる。

――――いい匂い!

後藤先生そうですね。鼻をつまんでいると感じなかった味が、手を放した瞬間に伝わってきたでしょ。鼻でもおいしさを感じるんですよ。風邪を引いて鼻が詰まっていると何も味を感じないでしょう? おいしさを感じるのは舌だけではないんです。目で見ておいしそう! と感じることもあるし、いい香りを嗅いだときや、金平糖を食べたときのカリカリした音を聞いたとき、包丁でトントン切る音を聞いたときもなんだかおいしそうだと感じませんか? 味、見た目、香り、音が全部合わさって、おいしく思うわけです。わかりますか? たとえばの話ですが、ハンバーガーが好きだからといってそればっかり食べていると、苦いとか、すっぱいとか、他の味がわからなくなってしまうかもしれません。朝食もパンばかりでなく、ときどきはお味噌汁を飲むようにして、日本人が大切にしてきた「うまみ」を味わうようにしましょうね。

  • 会員制農園ポモナ
  • 会員制農園ポモナ

撮影協力/会員制農園ポモナ

「ポモナ」は、都心からほど近い自然溢れる場所で野菜作りや収穫体験ができる会員制農場。
本格的に野菜作りをしたい場合は、13平米の区画で土作りから種や苗の植え付け、収穫までをスタッフとともに行う野菜作り会員(4月~翌1月 ¥13,800/月)、収穫だけを楽しみたい場合は、摘み取り会員(入園料1家族1回¥1,500+収穫した野菜の料金)と、気軽に参加できるシステム。獲れたての野菜をバーベキューやダッチオーブンで味わうことも可能(要予約)。

東京都小金井市関野町2-4-3
☎042-388-8381
営業 10:00~17:00 / 休 火曜・水曜

後藤加寿子
PROFILE/後藤加寿子さん茶道武者小路千家十三世家元有隣斎と千澄子の長女として京都に生まれる。
同志社大学文学部で美術史を専攻し陶磁器の研究に携わる。
茶懐石料理研究家の第一人者でもあったお母様からの影響は大きいながらも、自ら海外にも積極的に出かけ、現地の食材や新しい調理器具を取り入れるなど、現代の家庭でも作りやすくアレンジした独自のスタイルで“和の食と心”を伝えている。
本格茶懐石と家庭料理、対極にあると思われがちだが実は根本は同じとのこと。近年では、この2つを柱に教室を主催。また、一般社団法人和食文化国民会議(略称:和食会議)の顧問も務めている。
著書に『おいしいね。まずはおだしで。』(文化出版局)、『茶懐石に学ぶ日日の料理 』(文化出版局※2011年、世界の優れた料理本を表彰するグルマン世界料理本大賞の「食の文化遺産特別賞」を受賞)など多数。
連載第十一回予告 「食育」の重要なポイントのひとつが「旬」を生かした料理であるかどうか。季節感の重要性を子供たちにも伝えたいですね

撮影/鍋島徳恭 取材/秋山美英