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NIPPONの「和食遺産」を巡る旅 京都編

榊ゆりこさん、「八寸」で京料理の美学を学ぶ

全国に伝わる郷土料理を紹介してきた連載の特別編として、今月は「和食遺産」の核となる町・京都で懐石料理の八寸について学びます。
味覚はもちろんのこと、見た目も重視される繊細な京料理のなかでも八寸は料理人の美意識が反映される一品。そのもてなしの心を榊ゆりこさんが教わりました。

八寸
紅葉した枝ものをダイナミックにあしらって、イガグリや柿の器などで秋を表現した11月の八寸(2名分)。左から、紫ずきん、厚焼き玉子、銀杏の白和え、松風、車海老、中に大徳寺納豆を入れた栗きんとん、さんまの甘露煮、松茸と三つ葉のおひたし、いちじくの胡麻クリーム。

一皿の中に季節の“酒肴”を盛り込む八寸は
茶道の伝統を受け継ぐ懐石料理の華

祇園 浅田屋 浅田恭平さん
季節をダイナミックに表現した八寸が評判の「祇園 浅田屋」の浅田恭平さんにご教示いただきました。
光陰矢の如し
雪吊りをイメージしたあしらいや、干支の器で行く年来る年を「光陰矢の如し」の言葉とともに表現した遊び心のある12月の八寸(2名分)。左から、干支の器にあん肝のソテー、からすみ大根、車海老、胡桃と百合根入り松風、菊菜の白和え、雲子ポン酢、からし蓮根、くわい。

「八寸は、前菜の盛り合わせというイメージを持っていましたが、実際はどういうお料理なのですか?」

もともとは茶懐石で八寸(約24㎝)角の杉生地の盆に、酒の肴となる海の幸、山の幸を少しずつ盛り合わせ、亭主と客が酒を酌み交わすためのもてなし料理のことで、現在では、八寸という言葉だけが残って、盛り付ける器も料理の内容もいろいろな形に変化して供されるようになりました。

「順番としては、やはり前菜として最初に出てくるものですか?」

先付八寸といって、最初に出す場合もありますが、コースの中盤に、お酒の進み具合を見ながら“もう一献いかがですか?”と、勧めるためにお出しするのが主流です。懐石料理の献立では「強肴」と呼ばれるものです。

「見た目が華やかなので、酒の肴とは思っていませんでした。盛り付ける品数は決まっているのですか?」

正式な茶懐石では2種類ですが、料理屋では2種類だと物足りない(笑)ので、当店では8~9品は盛り込みます。

「ひとりずつではなく、人数分を一緒に盛り付けるのも決まりごとですか?」

取り回していただく茶懐石の作法が部分的に継承されているのかもしれませんが、当店の場合は、ひと皿に盛って取り分けるスタイルが多いですね。

「そのほうがインパクトがありますものね。日本料理は“お椀”が主役と聞きますが、見た目の華やかさでは八寸のほうが主役っぽいような気も……」

献立には起承転結の流れが必要で、先付、向付、お造りときて、メインの椀物が出て、焼き物、炊き合わせと進んでいきますが、尻すぼみにならないように、後半にもう一度山を作るのが、八寸の役割でもあります。

「なるほど~。そうやって緩急をつけるわけですね。特に季節感溢れる盛り付けは、盛り上がりますよね」

華やかに盛り込むと喜んでいただけるので欠かせない一品です。

「口福も眼福も満たしてくれる八寸は、まさに日本が誇る和食遺産ですね」

カニを薄くず仕立てにしたお椀

小かぶ、ワカメ、金時人参、かぶの葉に柚子をあしらい、カニを薄くず仕立てにしたお椀。京野菜とカニの優しい風味が口の中に広がり、ほっこりする一品。

祇園 浅田屋

季節の酒肴8~9品を盛り込んだ
正統派の八寸が味わえる期待の新店

古美術店が軒を連ねる新門前通の路地の奥に、今年1月にオープンした6席のカウンター割烹。
店主は「吉兆」で7年間修業後独立した若き料理人、浅田恭平さん。華やかに盛り込まれた八寸を含むおまかせコースは月替わりで、季節ごとの風情を愉しめます。
食材は京都のものに限らず、出身地・能登の塩や米、酒など全国から取り寄せていて、特に大阪の「河内鴨」は、お寿司にして必ずお凌ぎに出す名物だそう。
目の前で調理する様子を見ながら美味を堪能できるシェフズテーブル的な掘り炬燵の空間も居心地がよく魅力です。

祇園 浅田屋
DATA
京都市東山区新門前通
花見小路東入る中之町247
☎ 075-531-5065
営業:昼12:00入店、
夜17:00~20:00(L.O.)不定休
※昼、夜とも予約は
前日までに¥8,000~
こんな路地の奥に料理屋さんがあるなんてびっくり!

コート¥43,000ビジュー付きセーター¥17,500ホワイトジーンズ¥32,000クラッチバッグ¥9,300(すべてアン レクレ)シューズ(私物)

季節感溢れる見目麗しい八寸が楽しめる今注目のお店へ

京料理の名店で研鑽を積んで独立した若手料理人の店が次々オープンしている京都。話題の店を訪ねるのも旅の楽しみのひとつです。伝統を踏まえながら、新しいことにも積極的に挑戦している実力派の店で、五感を刺激する八寸をはじめとする最旬の料理をご紹介。

パイ生地にこしあんクリーム!「あんしゅー」も美味です。

甘い誘惑がいっぱいの
和菓子の都では
進化系スイーツが続々登場

甘味屋さん巡りを楽しんだり、季節の和菓子を予約買いしたり、京都は甘いもの好きにはたまらなく魅力的な町。最近京みやげの新定番として注目されているのは、和と洋のエッセンスが程よくミックスしたモダン和菓子。ニューオープンのお店も要チェックです。

コート¥34,000、ニットワンピース¥60,000、
バッグ¥30,000(すべてアン レクレ)ピアス(私物)

撮影/渡辺晃行 モデル/榊ゆりこ ヘア・メーク/山根里江子 スタイリスト/加藤万紀子 取材・構成/秋山美英

STORY 2015年12月号より