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光文社厳選!和食情報ナビ

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行きつけの酒と美味 三種の神肴 その3 〆鯖目当てに暖簾をくぐる

「三種の神肴」とはすなわち、その居酒屋に於いてまずは注文したい名物の3品。
今回はシリーズ第3弾として、「煮込み」「ポテトサラダ」に続き、
「〆鯖」を三種の神肴の軸に、大人が行きつけにしたい上質な居酒屋9軒を東西から厳選した。
嫁に食わすなとも言われる秋鯖だが、むしろ食わせて妻を労わるもよし!?

旬水 しゅんすい

麻布十番旬水 しゅんすい

  • 住所:東京都港区南麻布1-6-31 南麻布ビル1F
  • 電話:03-3452-3933
  • 営業時間:18:00~24:00 / 休日:月曜休
  • 席数:カウンター10席、テーブル4席※全席禁煙
  • お通し:¥500
  • 予約:予約がベター
  • 最寄駅:東京メトロ南北線ほか「麻布十番駅」から徒歩約10分
  • オープン年月:2012年8月
  • 酒の種類:常時120種類以上揃う日本酒は90㎖で¥500~提供。希少酒も多い。
  • 客層:40代、男性を中心に、日本酒好きなどが幅広く訪れる。2回転目は地元民が多い。
旬水 しゅんすい
左から「裏死神 純米大吟醸」¥800、
「梅乃宿 雫 純米大吟醸 袋づり」¥1,000、
「寫楽 純米吟醸 山田錦」¥700。
米の旨みを感じる日本酒が多い。

店主の好きが高じたラインナップ。
マニアな酒と光り物が手招きする店

「日本酒は常時120種類ぐらいですかね。食事に合わせた旨い酒。さらに酒に合う食事が店のコンセプトです」と語るのは「旬水」主人の渡邊智之氏。
ミシュランガイド2015では、ビブグルマンにも選ばれた同店。旨い肴は、まさに折紙付であるのだが、さらに言えば渡邊氏は無類の光り物好き。季節の旬素材で作る料理には、常に何かしらの光り物があるという。
〆鯖ならば、砂糖で締めてから塩で締めて、赤酢と米酢のブレンドで締めた後、ひと晩寝かせる。それを秋が旬の焼き茄子をカツオ出汁で炊いてすり流しにしたものといちじくで合わせてみせる。
「光り物と果物って意外と合うんです。鯵と小梅とか、鰯にパクチーなんてのもありですね」話を聞いているだけで、渡邊氏の光り物愛がひしひし伝わってくる。研鑽を積んだ「祇園さゝ木」を彷彿とさせる鯖寿司に、酒蒸しした肝醤油で味わう秋刀魚の握り。次々と現れた光り物に、左党垂涎の日本酒が脇を固める盤石ぶり。我こそはという光り物好きは、この名店へ急行されたし。

日本酒一色の店内はカウンターの他、ゆったりとしたテーブル席もあり。大きな冷蔵庫の中には季節の酒をはじめ、垂涎の銘柄が多数取り揃う。

中目黒酒人あぎ さかと あぎ

  • 住所:東京都目黒区中目黒2-10-16 中目黒ウィングビル1F
  • 電話:03-6451-2969
  • 営業時間:18:00~24:00(23:00L.O.) / 休日:月曜休
  • 席数:カウンター4席、テーブル8席 ※全席禁煙
  • サービス料:なし
  • 予約:要予約
  • 最寄駅:東急東横線ほか「中目黒駅」から徒歩約8分
  • オープン年月:2014年3月
  • 酒の種類:日本酒約50種類。90㎖で¥500・¥600ほか、別途限定酒あり。
  • 客層:30代前半から40~50代がメイン。男女比は半々。クリエイター、ファッション関係、制作関係が多い。
酒人あぎ さかと あぎ
長野県川中島の酒蔵「酒千蔵野」の酒、「鬼辛けんちの」グラス¥600。せめ、あらばしり、中汲みをそれぞれ飲み比べられるのも魅力だ。

炙りも織り交ぜ、薬味にもこだわる
通の信頼と期待に応える日本酒酒場

中目黒駅から徒歩数分。山手通り沿いに昨年3月にオープンした大人の酒場だ。9月よりコースからアラカルトに路線変更しながらも、「旨い料理と旨い酒」は変わらぬ身上。「個人的にも食べること、飲むことが好きなので」と、料理長。ストレートなその言葉は、信頼するに十分だろう。
実際、メニューは鮮魚あり、野菜あり、焼き物、揚げ物、煮物と左党好みのバラエティに富む内容だ。これからが旬本番という鯖なら「松輪」にこだわって仕入れ、〆鯖と炙り〆鯖の2種類を楽しませるからたまらない。塩と酢はやや強め、けれど軽めに締めることで生っぽさを残す手練れぶり。直球の料理も旨いが、一流のひねりを利かせた変化球の美味もまた旨い。緩急つけたアレンジの妙味にやられ、どうしても酒を欲してしまう。
日本酒の品揃えは定評があり、蔵元とのつながりも深いが、「マニアの店にならないよう初心者も楽しめるという流行の酒」を主体にする。美味と酒の旨さが拮抗し、あとはひたすら心酔していくのみ。
帰り際でさえも、また訪れてみたくなる。吸引力は絶大だ。

檜のカウンターを中心に構成される店。カウンターの上にはその日のおばんざいが並び、目移りしてしまうほど。

荒木町タキギヤ

  • 住所:東京都新宿区荒木町7 安藤ビル1F
  • 電話:03-3351-1776
  • 営業時間:17:00~23:30(L.O.)、土曜17:00~22:30(L.O.) / 休日:日曜・祝日休
  • 席数:カウンター7席、テーブル12席 ※全席喫煙可
  • お通し:¥300
  • 予約:予約がベター
  • 最寄駅:東京メトロ丸ノ内線「四谷三丁目駅」から徒歩約7分
  • オープン年月:2012年10月
  • 酒の種類:純米酒のみにこだわり、レギュラーで20種、黒板メニューで10種の酒が揃う。
  • 客層:「40~60代まで幅広いがジェントルマンばかり」と小林氏。女性客も多い。
タキギヤ
1.「秋鹿」の山廃¥750、「諏訪泉 純米吟醸 満天星」¥950、そして小林氏がお燗の旨さに開眼したという「神亀」¥850。料理に合わせたセレクトもしてくれる。
2.「秋から冬にかけては〆鯖と小肌をダブルで出している日が多いですね」と小林氏。中骨をキレイに外していくなど、丁寧な仕事でどちらも人気メニュー。

荒木町の銘酒亭の看板メニューは
変化球なしの、これぞ〆鯖

「ウチのは全然珍しい作り方じゃないっす。普通をどれだけ真面目にやるかだと思ってます」酒場ひしめく四ツ谷荒木町の一角に約3年前に店を構えた「タキギヤ」の小林充人氏。まっとうな作りの純米酒にこだわり、合わせる肴も季節の食材をお手頃価格で。そんな店は、今や連日酔客で賑わっているのだが、そこには奇を衒った味はなく、あるのはしみじみ旨い酒場の味ばかりなのだ。それが小林氏が言う、普通で旨い料理。
〆鯖もそんな店を支える代表料理のひとつ。まずは仕入れたばかりの鯖を大きさや、形、脂ののりと、じっくり見極めるところから仕込みが始まる。それを三枚に下ろし、べた塩に漬ける。個体差や時期により、締める時間はバラバラ。その後、塩の約半分の時間、酢で締める。酢は米酢を使い、仕込みで余った昆布の切れ端を少々。「もうね、作り方は全部教えちゃいました。あとはどれだけ手間をかけて丁寧に作るか、ですから。ほらね、やっぱり普通でしょ」
10年先、20年先も今と変わらずに店をやっていたい。そんな氏の〆鯖は、直球一本勝負だ。

日本酒一色の店内はカウンターの他、ゆったりとしたテーブル席もあり。大きな冷蔵庫の中には季節の酒をはじめ、垂涎の銘柄が多数取り揃う。

新宿吉本 よしもと

  • 住所:東京都新宿区西新宿1-13-3 西新ビル3F
  • 電話:03-3348-9658
  • 営業時間:17:00~23:00 / 休日:日曜・祝日休
  • 席数:カウンター9席、テーブル8席、座敷31席※全席喫煙可
  • お通し:¥830
  • 予約:予約がベター
  • 最寄駅:JR山手線ほか「新宿駅」から徒歩約3分
  • オープン年:1975年
  • 酒の種類:常時70種類、年間にすると140種前後の酒を揃える。地ビールや焼酎も。
  • 客層:40代前後のサラリーマンが中心だが、最近は女性客の増加が顕著。
吉本 よしもと
1.〆鯖に合わせるならと大原氏がセレクトしてくれたのは、「麓井 圓」生酛本辛純米¥720、「刈穂」山廃純米原酒 番外品¥830、「司牡丹」封印酒純米吟醸¥960。
2.span>「豊後水道の鯖は脂ののりも抜群ですね」と大原氏。天候などによりどうしても手に入らなかった時以外は豊後水道の鯖にこだわっている。

40年、変わらずに愛される〆鯖。
銘酒亭こだわりの一品で一献

「〆鯖に合わせるお酒ね~。だったら超辛口いってみようか。麓井の圓(まどか)に、刈穂の山廃なんて面白いですね~」
独特の柔らかな語り口調で、そう教えてくれるのは新宿の名酒亭「吉本」の2代目であり、利酒師でもある大原慶剛氏。
飲食の不毛時代より約40年にわたり、西新宿という街でまっとうな酒が飲める店であり続け、気がつけば日本酒の聖地とまで崇められる同店。だが、この店にそんなおごりや気取りは一切ない。ただ、あるのは先代より守り続ける多彩な肴と、全国より厳選を重ねた銘酒ばかり。それを客の好みに応じて大原氏以下ベテランスタッフが、「吉本」ならではのマリアージュでおすすめしてくれるのだ。
「豊後水道の鯖を使いあまり締めすぎない。持ちは悪いけど、これが日本酒には馴染みます」
あくまでも店本位ではなく、客本位。そんな姿勢こそが、40年愛される店の根幹。日本酒の聖地には、それにふさわしい名バイプレーヤーがしっかり脇を固めているのだ。そんな歴史を感じさせるやさしい〆鯖が、西新宿にはある。

麻布十番の中心に位置する、知る人ぞ知る魚料理の名店。入口入ってすぐにカウンターとテーブル席が1卓、店内奥には小上がりの座敷席も。用途に応じた使い分けが可能だ。

麻布十番さかなや富ちゃん 麻布十番店

  • 住所:東京都港区麻布十番3-7-5 マスコビルB1
  • 電話:03-3455-6465
  • 営業時間:17:30~翌2:00(L.O.)※土曜・祝日は18:00~23:00(L.O.)
  • 休日:日曜休
  • 席数:カウンター10席、テーブル22席※全席喫煙可
  • サービス料:なし
  • 予約:予約が確実
  • 最寄駅:東京メトロ南北線ほか「麻布十番駅」から徒歩約5分
  • オープン年:2009年9月
  • 酒の種類:焼酎が常時15種類前後、日本酒は1種類のみ。
  • 客層:男性客が6割。30代後半から60代までと年齢層は幅広い。テレビ局、制作会社関係者が多い。
さかなや富ちゃん 麻布十番店
日本酒は一ノ蔵「一ノ蔵 無鑑査本醸造辛口」にこだわる。
辛口で飲み飽きないロングセラー。
どんな魚料理とも合わせやすいのが特徴。

魚の旨さを美味な料理で知らしめる
すべてが”ごちそう“の名店へ

旬の旨い魚をとことん味わい尽くしたい。そう思い立ったら、真っ先に向かうべき1軒だろう。店内には大きな生けすが3つ。なかなかのこだわりぶりだ。
「〆鯖の押し寿司は奥が深い。寿司の中でも5本の指に入る」と、きっぱり言い切る店主。産地は問わずその日もっともいい状態の鯖を仕入れ、塩9、砂糖1の割合で〆鯖に。ショウガと柚子、ごまを加えたごはんと合わせたら、練れた旨さを出すために、巻いてから半日寝かせて提供している。
「〆鯖だけじゃ2~3切れがせいぜいだけど、押し寿司なら何個だっていける」と再び、店主。その言葉に押されて味わえば、肉厚の鯖はフレッシュ感が際立ち、酢と塩の塩梅で俄然、酒が欲しくなるから何とも罪深い。
自然の甘みが詰まった濃厚なカニクリームコロッケに、脂がのった旬のぶりシャブなど、どの品も誠実な仕事ぶりは一目瞭然で、勢いのある旨さにすっかり魅了される。酒は焼酎が15種類に日本酒1種類という偏りも好ましい。真っ当な料理に目利きした酒。居酒屋において、これに勝るものなし。

東京駅八重洲口からほど近い、繁華街の一角に位置。広々とした店内はテーブル席主体。各スペースとも間仕切りがされており個室のような空間。腰を落ち着けて堪能できる。

八重洲夢酒知花 むしゅ ちはな

  • 住所:東京都中央区八重洲1-7-10 今井ビルB1
  • 電話:03-3245-1666
  • 営業時間:17:00~23:00※土曜・祝日は16:00~22:00 / 休日:日曜休
  • 席数:テーブル50席※全席喫煙可
  • サービス料:なし
  • 予約:予約が確実
  • 最寄駅:JRほか「東京駅」・東京メトロ東西線ほか「日本橋駅」から共に徒歩約3分
  • オープン年:1998年4月
  • 酒の種類:日本酒30~40種類をはじめ、焼酎、ウイスキー、ワインと幅広く揃える。
  • 客層:近隣のビジネスマンが主体で、9割が男性客。30代の若手から60代の役員クラスまで客層はさまざま。
夢酒知花 むしゅ ちはな
日本酒の品揃えは特筆もの。
常時30~40種類をラインナップ。
グラス¥550~¥1,380。「日高見」グラス¥550、
「蒼天伝」グラス¥680。共に石巻の日本酒。

気仙沼から直送される鮮度抜群の鯖は
持ち味を芯から引き出して
締めるのが身上

日本を代表するビジネス街であり、飲み屋に喫茶店、雀荘が点在するサラリーマンの街、東京・八重洲。この地に開店して17年目を迎える、旨い料理とこだわりの日本酒が評判の居酒屋である。訪れる客の9割が男性という客層からしても、味と雰囲気は察しがつく。何より、懐ろに優しいのがうれしい。
数あるメニューの中でも、魚は味わうべきひと品。気仙沼の魚卸「丸入商店」が目利きした新鮮な旬魚を直送し、あの手この手で食べさせる。本命の〆鯖もしかりで、まず砂糖で余分な水分を抜いてから、強塩と軽めの酢で締めるのがこの店のやり方。表面に酸味と甘みをきっちりのせつつ、中心から鯖本来の味わいを引き出してやる。めずらしい江戸東京野菜を使った料理もいいが、冷え込みが厳しいこれからの季節はぜひとも東京牛鍋を。魚にせよ肉にせよ、いずれも30~40種類揃えるという全国各地の日本酒が美味をいっそう引き上げてくれるはずだ。
街の磁力にも惹かれながら、幾度となく足を向けてみたい。

関西版

カウンター前の水槽にはこの日は子持ち鮎が泳いでいた。食べたい物や調理法、合わせる酒を気軽に相談できる。コースも¥5,000から対応できる。

兵庫・園田扇木 おうぎ

  • 住所:兵庫県尼崎市東園田町9-17-18 原ビル1F
  • 電話:06-6494-1880
  • 営業時間:11:30〜14:00、17:30〜23:00(L.O.)
  • 休日:月曜休※祝日の場合は翌日休
  • 席数:カウンター11席、小上がり12席 ※全席喫煙可
  • 付出し:¥600〜¥650
  • 予約:した方がよい
  • 最寄駅:阪急神戸線「園田駅」から徒歩約2分
  • オープン年月:2008年7月
  • 酒の種類:日本酒は常時10種類前後、1合¥750〜。ハイボール¥550、ボトルワイン¥2,800〜。
  • 客層:地元客だけでなく、大阪方面からこちらを目指して通い来る常連客も多い。40代から60代くらいまで。
扇木 おうぎ
この日は刻んだレモンを酢に浮かべて鯖を締めていた。柑橘は季節に応じて。すだちやオレンジを使うことも。

一軒で、季節の味と〆の寿司。
双方いいとこどりが嬉しい夜

品書きは80品以上。あれこれとそそられて、結果常連客の大半は「おまかせで!」となる。店主の荻谷寿一氏の丁寧な仕事ぶりと確かな目利きに絶大なる信頼を置いている証しだ。
活のアワビをスライスして野菜と炒めたバター焼き。ほくほくの海老芋と、とろーり白子、旬味の出合いの揚げ出しは温かいあん掛けで。割烹修業の腕が光る。一品料理と酒を堪能した後、〆に寿司をつまめるのもいい。
店の隣には実家が営む30年以上続く、持ち帰り寿司の専門店があり、荻谷氏自身も大阪・北新地の寿司の名店での修業経験もあるのだ。
刻んだガリと大葉を、シャリの中に巻き込んだ鯖の小袖寿司。〆鯖の上には山椒煮ものせるなど、アクセントが効いていて、満腹でもするりと腹に収まる。「親父の店では、鯖や秋刀魚などの魚を酢で締める時は、季節の柑橘を刻んで一緒に入れて風味付けるんです」という、鯖の締め方も一工夫あり。ユニークで爽やかな小袖寿司、一食の価値ありだ。

祇園 河道 ぎおん かわみち

京都・祗園祇園 河道 ぎおん かわみち

  • 住所:京都府京都市東山区大和大路四条上ル常磐町149ー1 幕間2F
  • 電話:075-531-0154
  • 営業時間:18:00〜22:00(L.O.) 休日:不定休
  • 席数:カウンター8席、テーブル6席※満席時は禁煙
  • 付出し:¥600
  • 予約:要予約
  • 最寄駅:京阪本線「祇園四条駅」から徒歩約1分
  • オープン年月:2010年10月
  • 酒の種類:京都や滋賀産などの地酒約12種1合¥700〜。ほか、ワイン、焼酎、ウイスキー、カルバドスと豊富に揃う。
  • 客層:40代後半〜60代中心で、カジュアルな接待、プライベート利用が半々。
    1人客同士がカウンターで顔見知りになることも多々。

女性店主の創意工夫で
優しい甘みを加え、食感もとろりと変化

窓の正面に南座を一望する、祇園の穴場的な立地。割烹などで腕を磨いた店主の河本純美さんが、凛とした身のこなしと、季節を映したアラカルト料理で魅せる。
通年味わえる〆鯖は、塩で軽く締めた後、黒砂糖を全面にたっぷりとまぶすのが特徴的。「2時間ほど砂糖をなじませると、ほんのり甘くなるんですよ」と河本さん。端が少しとろけるほど締められた身は、口の中でふわりとほどけ、余韻にあえかな甘みが残る。なんとも優しい味わいだ。秋ならではの地酒”ひやおろし“が脂をスッと流し、またぞろ次のひと口をいざなう。ゆるりと祇園の夜を過ごそう。

カウンターと、4人掛けテーブルが2卓の小さな店。調理はすべて中村氏が一人で。設えは居酒屋、料理は割烹級。

兵庫・新在家遊菜酒家 なかむら

  • 住所:兵庫県神戸市灘区友田町4-3-21
  • 電話:078-856-9487
  • 営業時間:18:00〜22:00(L.O.)※土日祝は17:30〜 / 休日:火曜休
  • 席数:カウンター8席、テーブル8席 ※全席喫煙可
  • 付出し:¥400
  • 予約:したほうがよい
  • 最寄駅:阪神本線「新在家駅」から徒歩約2分
  • オープン年月:1992年8月
  • 酒の種類:焼酎は麦・芋・黒糖等様々、グラス¥500〜。日本酒は季節の酒を入れ替えで常時10種類前後、グラス¥500〜。「店主の隠し酒」としてレア銘柄の用意もあるので相談を。
  • 客層:近くの神戸大学生だった頃から社会人になって戻ってくる人まで長年の顧客が多い。30代から70代まで。

路地に潜む粋な店。
居心地よく大人喜ぶ名酒名味が目白押し

大通りに隠れた、細い路地。こういう場所にこそ味わい深い店が潜んでいる。主の中村一也氏が気軽な居酒屋として開店した店だったが、大人の通人に愛されて、次第にピンの食材を用いての割烹風料理へと進化した。
店主が海釣りをすることもあり、特に魚の目利きは厳しい。明石や淡路島産を中心に仕入れる。例えば取材時の〆鯖には脂のりのよいゴマ鯖を。当日昼前に競りに掛かり、鮮魚店に昼すぎに到着する「昼網」の新鮮な鯖だ。冬場は真鯖も使う。塩をして3時間置き、開店前の30分だけ酢で締める。その酢は、昆布を3日ほど浸して旨みを引き出してあるという。技が利き上品な酒呼ぶ品が多数揃う隠れ家だ。

撮影/鈴木拓也、田村浩章、富澤 元、岡本 寿 取材・文/大西健俊、粂 真美子、三好彩子、泡☆盛子

Gainer 2015年12月号より