site_logo

光文社厳選!和食情報ナビ

washoku

第1回 あなたの味覚は大丈夫?30代から始める味育 「現代的味育のススメ」

「おいしい食事」を食べて、不幸になるひとはいない。毎日の食事で「おいしさ」を感じることができれば、ストレスや不安を軽減させることができるかもしれません。いまの自分がどんな状態にあるのか。五感を意識して、「これ、おいしい!」と気づくことのできる自分の感性は、きっと素敵で、やさしい心で満たされているはず。味を知り、味を楽しむ大人の「味育(みいく)」始めてみましょう。

「味を育てる」とは?

 人間の味覚とは、一体いつごろ育まれるのか。およそ3歳までに出来上がると言われています。これは、「五味(ごみ)」と言われる味の種類の中から、生まれ持って避けるようにされている「苦味」や「酸味」の味を知り、「食べられる」ということを認識する年齢ということです。子供の頃、「野菜が嫌いだった」「酢豚や酢飯が好きではない」といった好みには、人間の体調や命を守る本能的に身についた「意味」があったのです。

 薬や毒物の象徴と言われる「苦味」や腐敗の象徴と言われる「酸味」は、ともに人間の体調や生命に影響を与えるため、手放しに口にするということはありません。生まれ持って避けるものを口にするには、信頼できる存在の「手本」が必要です。
 幼少期における信頼できる「手本」は自分の両親が主な存在であり、毎日食卓を囲む人の様子を見て、「食べてみよう」という興味をそそります。したがって、食育の基本は「一緒に食べる」ことで、「視覚」から興味をもち、口に運んで「味覚」で実感し、五味を組み立てていくプロセスの繰り返しによって育まれるのです。

「おいしさ」って一体何?

 あなたは、1週間前に食べた食事の味を思い出すことができますか?長時間友人と並んで食べた甘味の味は印象深くある一方、寿司のワサビが効きすぎて、鼻を突く印象だけが残るなど、人間は「おいしさ」を「脳」で心地良いか否かによって振り分け、記憶していきます。
 しかも、おいしさは「味」だけではありません。香りや食感(テクスチャー)は繊細の味を表現する上では欠かせない要素ですし、冷たいものは冷たく、温かいものは温かくと、「温度」に気を配ることが、食事の演出に置いても重要です。味だけでなく、これらの「おいしさの構成要素(図参照)」に気を配って料理を構成することができるかが、「おいしさ」を作り上げていく上で欠かせない考え方なのです。

※出展:「おいしさの構成要素(味香り戦略研究所)」

「大人」だからこそできる「味育(みいく)」

 幼少期に味覚が作られるなら、大人になった私には関係がない? 決してそんなことはありません。「五味を知る」ことが幼少期なら、大人になってからは「好き嫌い」を克服し、「種類」を育む時期です。1日3食だとしても、1年で1095食もの食事機会があります。この機会を活かし、幼少期に食べられなかったものや、まだ知らない味にチャレンジする。そうして「味のバリエーション」を広げていくことは、自分のおいしさの選択肢を増やしてくれます。
 ここで大切なことは、「孤食」をしないことです。一人で食べる「孤食」や、別々のものを食べる「個食」など、食卓を囲む際のコミュニケーションがなければ、自分の感覚を客観的に知ることができません。同じものを食べれば、味わいの感じ方も人それぞれ。その違いを認識し、共有することで「自分の感じ方」を自覚することができるのです。「これ、酸味が強すぎない?」「そう?」そんな一言をやりとりしながら「自分にとってちょうどよい味」を発見できるのです。
 「一緒に」食べる。おいしさを「言葉に」する。味を育む「味育(みいく)」は、表現力や社交性が身についた大人だからこそ、より楽しく取り組める、食の楽しみ方なのです。

コンテンツナビゲーター 菅 慎太郎(かん しんたろう) 口福ラボ代表1977年埼玉県生まれ。味覚コンサルタント&コピーライター。「おいしさ」の表現を企画する口福ラボを主宰し、味香り戦略研究所では「味覚参謀(フェロー)」としてマーケット分析、商品開発を手がける。一般社団法人日本味育協会講師

監修者編集後記  「和食文化」というキーワードの元、数回にわたりテーマを設け、皆さんと考える機会を設けさせていただきました。私たちも改めて和食文化の素晴らしさ、面白さに気づいた一方で、食べ手としての教育は文化継承において非常に大切であるということに気づきました。
 ただ、押し付がましい食育は長続きしないことも知っています。そこで、自分が一番信じている「味覚」というものを客観的に見つめなおしたり、面白く今までと異なる角度で知ることができたら、さらに、味覚の幅が広がるのではという仮説を立てました。
 味覚のプロフェッショナルの菅慎太郎さんを迎えて、改めて味覚の謎に迫りつつ、美味しいものを素直に美味しいという気づきと大切さを今一度、この和食文化において再考したいと考えています。
松田 龍太郎 1977年生まれ。青森県弘前市出身 慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。
その後、2007年企画・プロデュ−ス業に転身。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。
http://www.oiseau.co.jp